昨年、日本人初の主要4団体統一王者となった井上尚弥選手は、2023年1月にバンタム級王座返上と1階級上のスーパーバンタム級への転向を発表。
スーパーバンタム級初戦の対戦相手は、WBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者にして階級最強の呼び声高い、スティーブン・フルトン選手に決定しました。24戦24勝(21KO)と圧倒的な戦績を誇る井上尚弥選手に対し、フルトン選手も21戦21勝(8KO)。全盛期の無敗ファイター同士の対戦は掛け値なしの軽量級ビッグマッチです。
バンタム級を圧倒的な強さで制した井上尚弥選手は、果たしてスーパーバンタム級でもKOの山を築くことができるのか?モンスターの新たな挑戦がここから始まります。
この記事では、世界中のボクシングファンが注目する「スティーブン・フルトンvs井上尚弥」戦を追います!
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Table of Contents
世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
スティーブン・フルトン選手 vs 井上尚弥選手
Stephen Fulton Jr. vs Naoya Inoue
試合結果
WBC WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
WBC・WBO王者:スティーブン・フルトン(米国)● TKO 8R 1分14秒 ○井上尚弥(大橋)
有明アリーナ
前世界バンタム級主要4団体統一王者の井上尚弥選手(大橋)が、WBC & WBO世界スーパーバンタム級統一王者のスティーブン・フルトン選手(米国)を8回1分14秒TKOで破り、2冠奪取と4階級制覇に成功した。
日本人男子の4階級制覇は2018年9月の井岡一翔選手(志成)以来で、無敗での達成は初。
井上選手は2012年10月のプロデビュー以来、自身の持つ日本人ボクサーの歴代1位連勝記録を「25」に伸ばした。フルトン選手は22戦目で初黒星。
試合後インタビュー
井上尚弥選手
ーー皆さま、お待たせいたしました!WBC・WBO世界スーパーバンタム級新チャンピオン井上尚弥選手です!
(場内大歓声)
ーーおめでとうございます!
「皆さん、本当にありがとうございました。昨年バンタム級で4団体統一して、今年その4団体を全て返上することを決意しまして、今日このスーパーバンタム級タイトルマッチに挑むことが正式に決定して、それに向けて自分はひたすら練習に励んできました」
「その中、自分の練習中のけがにより一時延期ということもあり、関係者、そしてフルトン陣営の皆様が延期を快く受け入れてくれたので、今日この日を迎えることができました。本当にありがとうございました」
ーー井上選手、以前からこのスーパーバンタム級が適正という話も在りましたけれども、以前までの階級と比べてこの階級の違いを感じられましたか?
「すごくスピードもパワーもあり、充実した試合内容が今日こなせたと思うんですけど。それでもまだ、このスーパーバンタム級初戦ということで、練習中、その練習での、まだ『こうしたらいいんじゃないか』というものも今回見えましたし、まだまだリカバリーだったり減量方法だったり、まだまだ改善することが山ほどあると思うので、このスーパーバンタム級で、まだまだ強い姿を見せられるんじゃないかなと思います」
「それにあたり今日、自分が思うスーパーバンタム級最強のフルトンを8ラウンドで倒すことができたので、このスーパーバンタム級、最強と言えるんじゃないかなと思います。ただ僕が今持っているベルトは2本です。今日、この会場にタパレスが見に来ているということで。次戦、スーパーバンタム級で4団体統一戦をしたいと思います」
(WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級統一王者マーロン・タパレス選手がリングイン)
ーータパレス選手、この言葉を聞いて、ぜひ答えを聞かせてください!
タパレス「自分自身がチャンピオンであることを証明したいので、井上尚弥選手とぜひ試合がしたい」
「今年中に、この2つのベルトを懸けて戦いましょう」
(場内大歓声)
ーーなんとここで、ビッグマッチが決定しました!!
【動画】試合後会見
井上尚弥選手
ーー井上選手、お疲れ様でした!
「ありがとうございました!」
ーー少し時間が経ちましたけれども、落ち着いて今どんな気持ちですか?
「もう少し休みたいなと思っていますけど(苦笑)でも、本当に気持ち良い最高の日になりました」
ーーフルトン選手の試合が決まった時から、ファンの間でも『スティーブン・フルトンは今までで一番強い相手だ』という前評判がありました。実際に戦ってみていかがでしたか?
「そうですね、スーパーバンタム級の階級の壁は感じず戦うことができたので、しかもフルトンはスーパーバンタム級では、そこそこ大柄な選手だと思うので、スーパーバンタムでぜんぜんやれるなと証明できたのかなと思います」
ーー3ラウンドが過ぎて4ラウンドに入ったあたりから、フルトン選手が井上選手に少し慣れてきたように見えたのですが、その辺り井上選手は特に感じなかったですか?
「慣れてきたというか、自分がペースを落としたというか。前半1、2、3、4ラウンドを絶対に取らせないという気持ちででやっていたので。前半はしっかりとペース、ポイントを譲らず戦って、そこからはフルトンが出てこなきゃいけない展開をつくりたかった。自分が少しペースを落として、フルトンに合わせるじゃないけど、その中で戦おうかなと思ったので。見ている方からしたらそういうイメージになったのかなと思います」
ーー井上選手が思う、今日の試合で一番のポイントとなった点はどういったところでしょうか?
「やっぱり距離感ですね。戦う前からどちらの距離で戦うかというのは重要視していて、父とも話をしていたので。身長、リーチではフルトンが有利ですけど、その中で距離感を自分がつかむというか、ペースを取るという『そこだけは徹底しようね』と話をしながらトレーニングをしていたので。今日のポイントはそこかなと思います」
ーー最後、タパレス選手がリングに上がって『次の試合をしよう』という口約束がありましたけれども、今後の予定というのはまさにそこへ向かっていくという感じでしょうか?
「もちろんこちらはやる気でいるので、タパレス陣営との交渉がしっかりとまとまれば、そういった流れになると思っています」
ーーいきなりL字ガードで驚いたのですが、その狙いは距離の関係だったのでしょうか?
「フルトンのスタイルを研究している中で、L字ガードは自分の中で凄く使えるなと思ってトレーニングをしていました。その中で気をつけるのはフルトンの右のパンチ。しっかりショルダーでブロックしたり『そこだけはしっかり徹底しようね』っていうのは話しながらトレーニングしていました」
ーーL字ガードは距離を潰していく作戦の一つだと思いますが、ガードを下げるのでなかなか勇気がいる作戦のように思いますが?
「向かい合った時に、ペースを取らせないのが作戦ではあった。L字をギュッと固めて、そこで圧をかけるのは狙い目ではありましたね」
ーー真吾トレーナーが「第1ラウンドの攻防で全てわかるんじゃないか?」と仰っていましたが、どの辺で「いけるな」という感触を掴みましたか?
真吾トレーナー「1ラウンド目のリードの差し合いですよね。そこで自分がビックリしたくらいフルトンのパンチが尚に届いてなくて、尚が全部外して、尚のリードが当たっていたんで。自分は1ラウンド目のリードの差し合いで安心して見ていたんですけど。ただ気は抜くなよ、と言っていましたけど。自分はもっとアレかなと思ったんですけど、思いの外、尚が距離とステップでリードを外してたんで良かったんですけどね」
ーーフルトンが最初、意外と足を使わずにリング中央での戦いを挑んできましたが、試合前のイメージやスタートの展開はどうでしたか?
「それも全て自分の出方次第と想定していたんですけど。自分がリング中央で足をギュッと止めれば、フルトンも止めて戦わざるをえないというか。そうなるであろうなと思っていたので。まず始まった時に足をギュッと止めてプレスかけ過ぎず、プレスをかけ過ぎるとフルトンが足を使ってしまうので、かけ過ぎずジャブの差し合いで戦う。そしてジャブの差し合いで勝つ、という」
ーー敢えてそこで戦える程良いプレスで土俵に引き摺り込んだと。
「はい」
ーー今回は倒すことにこだわらず、判定勝ちも視野に入れての戦いだったと思いますが、7〜8回あたりから観客の方から「そろそろ」という期待が背中にのしかかってきたと思います。中盤辺り、意識するところはありましたか?
「いや、常にとりあえず判定でもいいから勝つ、と。今日は勝ちが大事だと思っていたので『判定でも』というのは頭にありましたけど。でもやっぱりどこかで倒したい気持ちと、少しフルトンのペースも落ちてきたので、ちょっとプレスをかけていこうかなと思った矢先に、練習を重ねていたパンチというか『これは必ず当たるだろう』と思っていたパンチが当たったので、良かったかなと思います」
ーーその練習を重ねていたパンチというのは左ボディーストレートから右のストレートのコンビネーションのことでしょうか?その意図というのは?
「まず突破口としての左のボディジャブというのはすごく練習していたんですけど、そこで散らしながら、前半は単発で持って行きながら。フルトンも落ちてきて、自分も距離感が慣れたところで右ストレートを上に繋げるというのは考えながら組み立ていたんで、本当にその一瞬の隙を突いたというか」
ーー今後についてタパレス選手の話もありますけど、海外ではESPNとかロマチェンコ選手が井上選手の話をしたことがニュースになったりとか、大橋会長がYoutubeで話をされたデービス選手の話が世の中で大きな騒ぎになったりとかありますけど、そういったファンやメディアの過熱ぶりをどうご覧になっていますか?夢の対戦実現の可能性は?
「ファンの方がそういう試合を空想して、想像して話してくれるのは嬉しいけど、自分としては現実味のない話ではあるので、どうなんでしょうね。自分としては今は何とも言えないです」
ーー大橋会長に伺いたいのですが「一番力が出る」と仰っていたスーパーバンタム級の井上選手の試合を見て、率直にどう思われましたか?
大橋会長「先ほどから出ているように、左ジャブの撃ち合いの技術戦で遠い距離で勝っていたっていうのが、ビックリではなく想定の範囲内なんだけど、あそこまで完璧に技術的に上に行ってるとは思わなかったので。あの距離の戦いで左ジャブのボディとか左ジャブの顔面とか、あれはすごく良かったですね」
「判定勝ちでも良かったんですけど、結果はKO勝ちになりましたけど、このKO勝ちと判定勝ちというのは全然違っていて、ライトフライから4階級で全てのチャンピオンをKOしたというのは今までに無い記録だと思うので、今日の試合でKOしたというのは本当に大きい意味のある試合だったなと思います。バトラーの時にKOしたのも、あれが判定勝ちとKO勝ちで全然違うんですけど、今回はそれ以上にフルトンをKOしたというのはすごく大きい試合だったと思います」
「なので、年内には4団体統一、その試合に向けて動き出したいと思います」
ーーパンチのスイングの強さやスピードの乗り方がバンタムの頃よりもより強く速くなっている印象を受けました。身体の感覚でこれまでにない感覚はどの辺りにあったのでしょうか?
「当日の計量が60.1kg。バンタムの時とさほど変わらないんですよ。ですけど、スピードだったり体重の乗りだったり、ステップワークしている時の安定感というのは全く違いました。1.8kgプラスというのは、自分にとって良い方向に傾いて試合できたんじゃないかと思います」
ーー試合終盤になるとバンタムまでだったら脱水の部分とかで脚に不安があったかと思うんですけど、そういった心配は無かったというのもあったんですか?
「そういう心配は全く無いですね」
ーーこれまでの試合と違って、楽しそうというか、より高みに向かっているように見えたのですが、いきなりスーパーバンタムの2団体王者と戦った試合というのはどうでしたか?
「やりがいもありましたし、この試合に向けてモチベーションも高かったです。スーパーバンタム級に転級して2団体王者と試合ができたというのは、自分の中で大きな試合ではありましたし、この試合が組めてできたことに感謝したいと思います」
ーー戦いながらはどんな気持ちだったでしょうか?
「楽しかったですよ。やっぱり技術戦であったり、その中ですごく頭も使いましたし。楽しく戦ってました」
ーーバンタムまで勝ってきたのとはまた違う世界?
「そうですね、ちょっと違いましたね」
そして、フルトン選手が尚弥選手にアジャストしてきたと思われた中盤が、まさか尚弥選手がフルトン選手を前に出させるための作戦だったとは…想像を遥かに超えていました。圧倒的なパワーと共に、このボクシングIQの高さこそが井上尚弥選手最大の武器ですね!
スティーブン・フルトン選手
ーー試合を終えて今の気持ちは?
「残念ながら、負けはしたけれども、悪い気分になってはいないよ」
ーー井上と実際に対戦してみての感想は?
「彼は素晴らしい選手、強い選手だった。彼が勝つべき日だったのかもしれないね。だからこそ、彼は今日勝利を挙げたのだろう」
ーー悪い気分になっていないのはなぜ?
「そこまで悪い気分になっていないというのは、自分自身が相手のテリトリーに来て、試合をした。そこで勝っても負けても、自分の心の中ではチャンピオンであり続けると思っているからだよ」
「彼をやっつけることはできなかったし、試合も勝利することはできなかったんだけど、自分も成人した大人だから、たくさんの人がいる前で、頭を抱えてガッカリする姿を見せることはないよ。もちろん、ガッカリはしている。でも、気分はそこまで悪くないということだよ」
ーー勝敗を分けたポイントは?
「彼がここまで過ごしてきた時間の方が、より良かったのかもしれないね。そして、試合中に当たったボディへのジャブ、自分の目には入っていなかった。だから、見えなかったというところもあるし、パワーというよりも本当にタイミングだったと思うよ」
ーー井上と対戦して想定外だったこと、驚いたことは何でしたか?具体的にパワー、スピード、ディフェンス…どれでしょう?
「自分自身も彼がどういう動きをするのか、そこまで前もって考えてきてたわけではない。もちろん彼は強かったけど、サプライズだったというところは無いよ」
それよりも、尚弥選手の術中にハマり動きを支配されたことで、実力を発揮しきれなかった悔しさはあるにせよ、試合後に尚弥選手が健闘を称え合おうとするのを無視し続けたのは残念でした。
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【動画】一夜明け会見
井上尚弥選手
ーー改めて試合は見ましたか?
「はい、見ました」
ーー感想を。
「戦前、物凄く相手のことを過大評価して挑んだので、リングに上がった時に自分の中で落ち着いて試合ができているなというのは、映像を見て改めて感じましたね」
ーーKOシーンを改めて見て
「凄く練習してきたパンチでしたし、それが8ラウンド目にハマって。しかも、かなり上手くハマって。左ジャブ、ボディージャブを散らして蒔いてあって、その蒔きがよくフィットしたのかなと思います」
ーー大橋会長と真吾トレーナーも試合映像をご覧になりましたか?
大橋会長「はい見ました。やっぱり現場で見ているのと映像で見るのでは若干違うことがあって、現場で見ている以上に技術で尚弥が圧倒していたっていう。そこが印象に残りましたね」
真吾トレーナー「自分はまだちょっと見ていないんですけど、昨日を振り返っても中間距離の技術戦というのはもう話をしたんですよ。絶対にポイントを取られないで、ポイントを取ろうねと。それをもう1ラウンド目で凄く確認というか確信ができたので、結構安心はしていたんですけど。だからこそ『緩むなよ』というのは言いながら」
ーー4階級制覇について改めて感想を。
「そうですね、4階級制覇についてはそんなに頭に無く、昨日も帰りの車で浩樹と『そういえば4階級なんだな』みたいな話をしてたくらい4階級のことはそんなに頭に無く、やっぱり『打倒フルトン』というところが一番頭にあったので。まぁ振り返ってみたら4階級目なんだなっていうのは感じますね」
ーー4団体制覇で4階級制覇というのはカネロに続いて2人目なんですが、それについてはどうですか?
大橋会長「あぁ、そうですか」
「それについて…あまり記録とかというのはこだわりが無いんで、それについてどうかと言われても特に本当に思うことがなくて、まだまだ全然ここがゴールでは無いので。この先を見ていて欲しいなと…」
真吾トレーナー「そろそろ良いんじゃないの?(苦笑)」
ーー昨日は試合後どのように過ごされましたか?
「家族・親戚で帰りの道中、ちょちょっと」
ーー焼肉ですか?
「いや、違います。ちょちょっと(笑)」
ーー眠れましたか?
「一睡もしてないので、ちょっとおかしくなってます(笑)」
ーーそれだけアドレナリンが出たということですか?
「寝ようと何度も試みたけど、アドレナリンがすごく出てて全然眠れなかったですね。それだけこの試合に懸けてきた想い、気持ちというのが強いんだなと改めて感じました」
ーー2回に相手のフックを続けてかわした直後の『来いよ』というジェスチャーはどういう意図の挑発?
「そこは挑発というか、心理戦ですよね。自分としてはフルトンを出させたい、冷静にさせたくないっていう気持ちもやっぱりあったので。それだけやっぱりフルトンの技術であったりテクニックであったり、そういうところを自分の中で凄く評価していたので、そういうところもああいう仕草で少し崩せたかなというのも思いながらやってましたね」
ーー大橋会長、試合前に例のテーピング問題で相手陣営が見にきているのが少し映っていたんですけど、問題なく終わったんでしょうか?文句つけられるとかも?
大橋会長「はい。問題なく終わりました。大丈夫です」
ーー映像をご覧になられて、改めてフルトンの強さを再評価するとしたらどの辺になりますか?
「4ラウンド目で自分もペースは落としたんですけど、そこで対応してくる力っていうのは感じましたね」
ーー試合前からずっと言っていた頭脳戦というのは今回、どこに一番現れたと思いますか?
「1ラウンドのゴングが鳴ってから、パンチを打たす前から駆け引きは始まっていたと思うし、自分はパンチは出していないんですけど、しっかりとプレス、圧をかけることが、映像を見て振り返って『できてるのかな』と思うし、そこからやっぱりお互いの頭脳戦というのは始まっていたと思いますよ。そこからやっぱり、ジャブから相手を崩していくっていうお互いの探り合いが始まっていったので、もう1ラウンドのゴングから始まっていたと思いますね」
ーー前にドネアとの1戦目の時に色々試合中の修羅場もあって3試合分の経験をしたという風に表現していましたけど、昨日の試合というのはそういう意味でどういう試合だったんですか?
「昨日の試合もすごく自分の中では価値ある試合で、やっぱり自分よりも背も高くリーチもあり懐の深い選手に、ああいう技術戦で上回ったということはすごく自信にもなりますし、1つ良いキャリアを積めたのかなと思います」
ーー8回にフルトンをぐらつかせた右ストレートも階級を上げられたことで今までと違う感触があったというのは感じられましたか?
「あのパンチに限らず、階級を上げたことによってパワーが増したというのは感じましたね」
ーーリング上で先々の課題というような事をおっしゃっていましたけど、我々から見ると課題はもう無いのかなぐらいに思っちゃうんですけど、敢えてチャンピオンが今後勝つ上での課題としているのはどういうところに置いておかれているんですか?
「う〜ん、昨日も言いましたけど、減量の仕方、リカバリーの仕方、あとは昨日スーパーバンタム級での身体でリングに上がって『もっとこういうトレーニングしたら、もっとこういうパフォーマンスができるんじゃ無いかな?』というところも自分の中で閃きというか、感じたこともあるので、今後のトレーニングに活かしていけたらなと思っています」
ーーまた新たに自分でトレーニング方法を色々と考えて、新しいことも取り込んでいこうというような?
「そうですね、トレーニング方法というか1つ1つの意識になりますけど、この1.8kgというプラスされた体重を無駄にしないように、活かせるんじゃないかなというのは思いました」
ーー最後に決めた左ボディージャブからの右ストレートを準備していたと。L字ガードでプレスをかけていくのも。用意していた作戦がピッタリハマった試合なのかなと思うんですけど。
「そうですね、あのパターンがたまたまあれでハマりましたけど、もう2~3パターン、こういうタイミングでくれば倒せるなというのは試合をやりながら感じていたパターンがあるので。その中であのパターンがはまったのかなと」
ーーもう2〜3パターンというのも用意していたんですか?
「用意もしていましたし、フルトンもやっぱり察知能力というのがすごくズバ抜けている選手なんで、なかなか昨日の試合では当てはまらなかったですけど、もう一歩、もう半歩きてくれたらという瞬間というのはあったんで」
ーーその作戦の準備は、どのくらい前からどのくらい時間をかけてやってきたのか?
「この試合が決まってからですね」
ーーある程度『完成したかな』というのはどれくらいですか?
「『完成したかな』というのは実際にフルトンと戦ったわけではないので、それはぶっつけ本番というところになってしまいますけど」
ーーじゃあ、完成したのは昨日?
「そのパターンで当てはまったので、そのコンビネーションとしては昨日かなと」
ーー真吾トレーナーはどうですか?用意した作戦がかなりハマったということについて。
「そうですね、インターバル中も『フルトンの右に右を合わせたいんだよね』みたいなことをポロッと言ってて。ただ一つ作戦を変えようとしたのは、ホールディングがすごいじゃないですか。それは徹底してやめて欲しいなというのはあったんですけど、4〜5くらいに行った時に、もう絶対に獲っていたので、自分でも確信してたので『逆にホールディングされないで付き合っちゃえばいいじゃん』って。ポイントを獲られているホールディングは怖いじゃないですか。取り戻せなくなっちゃうっていうのもあったんですけど。でも逆にしっかり取れていたんで『敢えて解さないでくっついて休んでもいいよね』って話はしてたんですけど」
ーーホールディングされた時に、かなり効果的に振り解いていた印象があるのですが?
「そうですねぇ…初回にアクションを起こし過ぎて2回注意されたんで『そろそろやめようかな』と(笑)やり過ぎたら減点喰らうかなと思ったんで。でもホールドされた時のちょっと空間を作りながらのパンチも練習はしていましたし。後頭部に2回注意されるようなパンチは撃っていないと思うんですけどね」
ーー4団体統一したらスーパーバンタムは卒業ですか?
「卒業とかないですよ(笑)しっかりとスーパーバンタム級がもうキツキツになるまではこの階級にいようと思いますし、無理して上げることは自分の中では考えていないので。仮に年内に決まって良い結果が出たとしても、スーパーバンタム級に留まると思いますし、そこはやっぱり前々から言ってるように階級制のスポーツなので、そこはしっかり自分の身体と相談しながら階級を決めていきたいと思います」
ーー当日の体重がバンタムの時と変わらなかった点も考慮?
「まぁ本当に少しずつですけどね。一気に筋肉をつけるとスピードも落ちてしまうんで、本当に少しずつ少しずつ意味のある筋肉を付けて。それに伴ってスピードも上げていくようなトレーニングをしていかないと結局意味が無くなってしまうんで。それにはやっぱり、まぁ3年はかかるかなと。しっかりスーパーバンタム級で身体を作っていきたいなと思っています」
ーータパレスにはどんな印象を持っていますか?
「タパレスの試合はあまり見たことがないですね。アフダマリエフの試合もまだ見てないですし」
ーーまだあまりぼやっとした印象しかない?
「なんとなくはありますけどね。ダイジェストで見たりとか…あれ?タパレスって拓と決まってたんだっけ?」
真吾トレーナー「1回そうだね。あの時、俺は結構怖いなっていうのは思ってた」
「あ、そうだよね。その時にちょっと見たのかな?」
ーー1回候補に挙がっていた?
「拓は決まったんだっけ?」
真吾トレーナー「どうでしたっけ?」
大橋会長「あったかも」
「タパレスが決まって、怪我をしたんだっけ?それ、タパレスだっけ?」
真吾トレーナー「怪我が入って、曖昧になって二転三転して」
大橋会長「そうそうそうそう」
真吾トレーナー「タパレスも強いですよ。あとは尚の戦い方次第。尚が自分の距離でやればやりやすいんですけど、やっぱり相手の土俵に入ったら、フルトンより怖いかもしれないですね。一発というところでパワーもあるんで」
ーー3年やったら相手がいなくなるのでは?
「どうですかね」
ーー自分自身の完成度もあると思いますが、ライバルがいなくなった時には次の階級へ行くことになるのでは?
「そうですね、自分の現役生活も残り限られているので、そこ次第ですかね。本当にやる意味がなくなったらキャリアの最終盤に差し掛かっているので、階級も考えますけど」
ーー海外メディアでは「フェザー級は十分いける」「スーパーフェザー級まで行ける」との声も出ていますが?
「人ごとですからね(苦笑)海外のメディアとかはそういうの見たいでしょうね(苦笑)」
ーー昨日の会見でも話が出ていましたが、大橋会長もYoutubeでガーボンタ・デービスの名前も挙げていましたが?
大橋会長「ま、人ごとだからね(笑)」
(会場爆笑)
ーータパレス選手とリング上で並ばれた時、何か感じたことはありましたか?
「めっちゃ太ってんなと思いました。それしかなかったですね」
ーーこのところ日本の試合が続いていますけど、本人としてはどうですか?海外でまたやりたいという気持ちはありますか?
「どうですかね。キャリアも最終盤で日本でもこういうビッグマッチが組める舞台になってきているので、逆に日本でそういう試合をバンバンこなして、この日本のボクシング界を盛り上げていったほうがいいんじゃないかなという気もしていますし」
ーー大橋会長も同じですか?
大橋会長「もう今言ったように同じですね。今はもう国内でラスベガスのような、昨日の試合だってラスベガスで行われているような試合で、フェザー級チャンピオン・オリンピック金メダリストが来たり、フルトンが来たり、大舞台が日本になっているので、今こうやって続けて開拓していくのが井上尚弥の役目なんじゃないかなと思ってますね」
ーー会場の問題とかもあると思うんですけど、国立とかも埋まっちゃうくらいの申し込みがあると思うんですけど。
大橋会長「まぁ対戦相手によっては全然可能ですよね。東京ドームとかね」
ーーまた今回、価値が上がったと思うんですけど、今後”ハコ”とか社会的な要請にどう答えていくのでしょうか?
大橋会長「そこはこれから考えますけど。ただ、今、試合会場が本当になかなか押さえられなくて、なかなか大変なんで。だから地方とかではアリなのかなと思っていますけどね」
ーー今は余韻に浸りたいところもあると思うのですが、次に向けたプランは、どれだけ休んでいつ頃練習とかありますか?
「あ、でも今日このあともう練習は…」
大橋秀行会長「えっ!?スッゲェな…」
「…しようかな…という気持ちはありますけど…ちゃんと休みます(笑)」
大橋秀行会長「ホントかと思った(汗)」
「気持ちだけはあります(笑)まぁでも、1週間くらい休んだら身体を自然に動かしたくなってくるんで、そこは感覚でやっていこうかなと思います」
ーーちなみに負傷された拳の状態は?
「昨日あれだけ思い切り殴っても大丈夫だったんで、100%完治ですね」
ーー今回で兄弟同時世界チャンピオンということになると思うんですけど…
「ああ、そうだ!」
大橋会長「忘れてた!そうだそうだ」
ーー真吾トレーナーにお気持ちをお聞かせ願えますか?
真吾トレーナー「今、言われて改めて『そうなんだ!』って思って。そうでしたねぇ。でも嬉しいですねぇ。すごいですねぇ」
「元々、バンタム級で兄弟同時というものを狙ってたんで、自分は1階級上げてスーパーバンタム級にいてちょっと実感が無かったというのが正直なところで。でもこうして兄弟同時で世界チャンピオンというラインに立てたんで、また次戦もお互いがチャンピオンで終われるように、今年は締めくくりたいと思います」
ーー大橋会長にお聞きしたいのですが、井上尚弥選手ご自身はスーパーバンタム級に留まると仰っていましたが、会長の階級のヴィジョンは同じですか?
大橋会長「今年中に4団体を統一して、来年色々、カシメロとかネリとか、そういった選手と試合をするのが一番盛り上がって行くんじゃないかなと思っています。そうなったら僕的にはフェザー級に上がって、昨日のラミレスとやったら面白いし、絶対に勝てるんじゃないかなと思います」
ーーそれを受けていかがでしょうか?
「その試合をこなせば今年、来年、3年目ってなっていくんで、そういった方向に向かっていくんじゃないかなと思います」
ーー事前の会見で「ナイーブ」と言ってしまったことがあったと思うんですが…
「それはもうやめましょう(苦笑)単にミスっただけです(苦笑)」
いずれフェザー級へ転級する日が来ても、尚弥選手ならパフォーマンスを上げて挑戦することになるでしょう!
それにしても、会見のオチが秀逸過ぎてw
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解説
長谷川穂積(元世界3階級制覇王者)
階級を上げた初戦が、いきなりの統一戦。井上尚選手は超技術戦と言える試合でしっかりと相手を仕留めた。序盤から主導権を握っていたが、無敗でうまさのあるフルトンは上体が柔らかく、足も動くので仕留めるのは難しい。また、3回からは前に出てポイントを取り始め、井上尚選手がいいパンチをもらう場面もあった。
互いに相手の出方を考えながらの試合は、体力だけでなく脳のスタミナを消耗する。こういう試合は、8回頃からお互いにふと気が抜ける瞬間がある。今回は、フルトンがジャブをついて一瞬、気を抜いたところでストレートを食らった。井上尚選手が、パンチの打ち分けとその威力で、相手との神経戦を制した形だ。
バンタム級から1・8キロ重いスーパーバンタム級へと階級を上げたタイミングもちょうどよかった。もちろん、ウエートを上げると相手の耐久力も増す。ただ、減量が軽くなったことで練習に集中できるし、パワーも上がる。無理やりウエートを上げたわけではないので、この日もパンチ力は増していた。
5年ぶりだった挑戦者の立場も、王座を守り続けるのとは違うモチベーションがあっただろう。次に狙うのは2階級目の4団体制覇でタパレスがターゲットになるが、彼はまた王者になったばかり。僕は元世界3階級制覇王者のジョンリール・カシメロ(フィリピン)のような、スーパーバンタムのナチュラルウエートでパンチのある選手との戦いを見てみたい。
引用:デイリースポーツ「長谷川穂積の拳心論」
山中慎介(元WBC世界バンタム級王者)
いやぁ~、声が出ません。やっぱり最後は倒すんですよね。井上にはすごいという言葉しか出てきません。本当に見応えのある試合でした。
ラストのKOシーンに彼の技術が結集されていました。右ストレートからの左フックでしたが、右を打つ前にしっかり左ボディーを打っているんです。フルトンの意識をボディーに集中させ、ガードが下がったところに右ストレートを打ち込んだあのコンビネーション。私も現役時代はやっていましたが、あれだけ的確に3つのパンチをまとめられるのは井上ぐらいでしょう。
負けはしたが、フルトンのテクニックも一流でした。ロープを背にしながらも足を止めず左右に動く。井上でなかったら、そこから自分のペースに引き込みポイントアウトしているはず。それ以上に井上のテクニックがすぐれていたということです。
試合前、フルトンと並んだ井上はやはりひとまわり小さく見えました。それがです。ゴングが鳴るとパンチ力の差は歴然。予想はしていましたが、ここまで井上のパンチが強いとは。バンタム級から1・8キロ重いスーパーバンタム級への転向は大正解でした。
階級を上げていきなり2つのベルトを手にした井上ですが、次はタパレス(WBA、IBF王者)との4団体統一戦なのか。私も世界王者時代にタパレスにスパーリングパートナーを頼んだ経験があります。確かにパンチは強かったですが、やりにくさではフルトンでしょう。いずれにしてもスーパーバンタム級での4団体統一も時間の問題です。
私は現役時代、得意パンチ、自分の武器を聞かれた時に「左ストレート」と答えていました。これを井上に当てはめると「全部が武器」と言い切れます。すべてのパンチが一級品で、試合後の顔が証明するようにディフェンスも超一級品。井上の最大の敵とは何か? 対戦相手ではなく、自身のけがだけでしょう。
引用元:スポーツ報知
田口良一(元WBA&IBF世界ライトフライ級統一王者)
毎回言っているかもしれないが、井上はやはりとんでもない存在だと思う。日本史上ではなく、世界的に見ても類を見ないボクサー。ここまで完成されてしまったのか、という印象を受ける。
何かが飛び抜けているのではない。パワーは規格外で群を抜いているがスピード、防御、スタミナ、精神、ボクシングIQ…どれもずぬけているのだ。階級を上げた壁は全く感じなかった。
8回での決着となったが、これくらいだと思っていた。序盤から井上がペースを握っていたが、なかなかフルトンも当てさせてくれない。防御勘にたけている相手で、そこが今までとの違いだった。レベルの高いチャンピオンだったが、スピードもパワーも井上は大きく上回っていた。
今後も、よほどのことがない限り井上が負ける可能性は限りなく低いだろう。今回の勝利で、スーパーバンタム級での4団体統一も確信に変わった。井上にとっての壁はまだまだ先。フェザー級など上の階級でもやれる力がある。元世界6階級王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)のようになれると感じた。
引用元:サンケイスポーツ
川島郭志(元WBC世界スーパーフライ級王者)
フルトンはテクニシャンとしての持ち味を100%出し切った。高いガードの位置を巧みに変えて、井上のパンチの軌道も読んでいた。立ち位置が悪いと感じたら、すぐに左右に動く。よく研究していたし、レベルの高いボクシングは予想以上だった。
その無敗王者を倒した井上の強さにあらためて驚いた。相手はテクニックに定評があり、粘り強い。1階級下から上げてきた井上の苦戦もあると思っていた。確かにいつもより空振りは多かったが、最後はきっちりと倒し切った。彼の高い潜在能力が、さらに引き出された一戦だった。
勝負を決めた右ストレートはボディーに1度フェイントをかけて、上を狙った。目線も下。だから上へのパンチが生きた。前半から効果的な左ジャブをボディーに打っていたことが、伏線になった。最後のとどめの左フックを含めて見事だった。
これで世界戦20連勝。普段の生活面も含めた節制のたまものだろう。それを長期間維持できるメンタルの強さにも驚く。パワーはこのクラスでも通用した。タパレスとの統一戦も、フェザー級もいけると思う。このまま35歳まで、全勝で駆け抜けそうだ。
引用元:日刊スポーツ
浜田剛史(元WBC世界スーパーライト級王者/帝拳ジム代表)
難しい試合になることもあるかと思っていたが、よく期待通りに勝った。井上のパンチ力はさすがだった。
これまでのフルトンは下がりながらでもパンチを当てて、ポイントを取る選手だった。1回の攻防で、井上の圧力を感じたのだろう。今回は下がる時に守りに徹し、パンチを出してこなかった。井上の一発一発のパンチを外すのに一生懸命だった。
3回からはポイントを取るために、前に出てきた。井上にとってはこれでパンチを当てやすくなり、戦いやすくなった。
井上は初回から冷静だった。ジャブの相打ちがあった後は、顎を引き、右のガードを顎の前や左に持っていって調整し、対処していた。7回に右ストレートでぐらつかせたところでは、すぐに追い打ちをかけた。効かせた瞬間を見逃さないところ、その突進力はさすがだった。
階級を上げた時には本来パワー面が課題となるが、井上の場合はまったく問題がないことを示した。フルトンはパワーパンチを打つ選手ではないとはいえ、技術戦、頭脳戦をしながら、パワーで圧倒した。スーパーバンタム級では相手がタフだとしても、パワーがあっても関係ないだろう。減量がラクになって、十分な練習が積めるようになり、ただただ力を出しやすくなった印象だ。井上の持ち味である攻撃力を発揮できる階級だと言える。
引用元:スポーツニッポン
大橋秀行(元WBA&WBC世界ミニマム級王者/大橋ジム会長)
3月16日、尚弥からプロ入り後初めて重要な相談を受けた。3月9日にメキシコ人パートナーとのスパーリング中に拳を痛めた。その後も練習を続け、無理してもやれるのかと思ったが、1週間後にセッティングされた私の誕生日会の席だった。「多分、延期は無理ですよね」と問われた。世界戦前の故障は今まで3回ほどあった。しかし、これまで腰痛などに苦しんでも絶対に何も言わずに全部、勝ってきた。初めて受けた重要な相談…。私は延期を即決した。後悔しないためだ。
昨年6月。ドネアとの2度目の対決の約1カ月ほど前に左肩を痛めた。得意の左フックが打てなかったが、尚弥からは何も言われず、試合は劇的な勝利を飾った。しかし、私は試合直前の控室で後悔していた。これまで故障を抱えていても父真吾トレーナーに「大丈夫ですよ」と安心の言葉をもらっていたが、あの時ばかりは「本調子ではないですよね」と表情を曇らせていた。あの時、なぜ私は延期を決断できなかったのか、と悔やんだ。たまたま劇的な勝利を収めたが、こんな運が続くわけがない。その経緯もあり、今回の私の決断は素早かった。
フルトン陣営、関係各所に延期をお願いし、会場はその翌日に確保した。6日間で約2カ月後の今日にスライドすることができた。フルトン陣営をはじめ、関係者にご迷惑をおかけし、さらなるご協力があって試合当日は気持ち良く迎えることができた。延期にはキャンセル料など多額の支出があったものの、尚弥にとって、結果的に約2カ月の延期は非常に良かったと言える。
まずスーパーバンタム級初戦の準備をさらに確保できた。一昨年11月からフィジカルを担当する八重樫(東)トレーナーに加え、5月からロンドン五輪ウエルター級代表の鈴木(康弘)トレーナーも加わった肉体面の強化メニューには、目を見張るものがあった。背中、両肩周囲の筋肉は、ほぼ毎日練習をみている私にも変化していったのが分かる。尚弥の通常体重63キロのまま、肉体の構造が違っているのだ。いつも節制している証しでもある。
尚弥が2団体統一王者になった今、次戦の交渉先を絞っている。もう1人の統一王者となるタパレスとの4団体統一戦をすぐに実現するつもりだ。タパレス本人とともに陣営も来日している。尚弥との対戦に前向きだと聞く。年内には4団体統一戦を日本で実現するつもりでいる。そして2階級での4団体統一に成功したら、24年は日本ボクシング界でも知られているルイス・ネリ(メキシコ)やジョンリール・カシメロ(フィリピン)との防衛戦を計画している。
まだまだ尚弥の現役生活は続くが、私は5年後、10年後も見据えている。今から尚弥には現役引退後にはプロモーターになってほしいと伝えてある。尚弥からも「やります!」と快諾を得ている。私は世界のボクシング界に名前が知れ渡った尚弥のような人物がプロモーターとして最適だと考える。いつも私の想定する未来を超えながら走っている尚弥は、本当に頼もしい存在だ。
引用元:日刊スポーツ
ジョー小泉(国際マッチメーカー)
なぜこんなすごい選手が日本から生まれたのだろう。筆者は英文で日本の試合を世界へ発信し続けて、60年目になる。今回、試合会場の記者席から専門サイト「ファイトニュース」へ試合速報を送った。一夜明けると、世界中からスーパーバンタム級の新王者、井上尚弥への賛辞が何と100通を超えていた。
モンスター井上が誕生した土壌を考える。〈1〉日本ボクシング界の歴史の積み重ね〈2〉国際交渉力の基盤〈3〉ネット時代到来による日本へのイベント誘致力。
日本初の世界王者、白井義男が終戦後の1952年5月19日に王座に就いてから71年。数多くの世界タイトルマッチが開催され、日本ボクシング界の技術力は着実に向上した。
第二のファクターは国際交渉力で、帝拳ジムの尽力により、王座認定団体を始め、トップランク社などの世界的プロモーターとのコネクションが大橋ジムと井上尚弥を支えている。
バンタム級王者ジェイミー・マクドネル(英国)、スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(米国)とも破格の試合報酬で日本開催にこぎつけた。ネット時代が開花し、国際的スポーツイベントに多額のオファー(提示)が可能になった。そんな状況下、井上尚弥という逸材が出現しスーパースターへと成長した。
「なぜ井上はこんなに強くなったのか?」。筆者には答えがある。第一に、大橋ジムには父親の真吾氏がコーチ、弟の拓真も世界王者というモンスター養成機構が成功している。第二に、尚弥がアマチュア選手の頃から、長谷川穂積、内山高志、山中慎介という好選手が10度以上の防衛を重ね、ボクシング界を先導した。彼らは井上のロールモデル(模範)となった。
最後に筆者が井上選手に願う夢がある。〈1〉生涯無敗を貫いてほしい〈2〉日本と米国で交互に戦い、さらに世界的名声を高めてほしい〈3〉体の柔軟性を失わず、さらに高度なボクシング、パワーを磨いてほしい。モンスター井上ならできる。
引用元:スポーツ報知
著名人の反応
松本人志(芸人)
井上チャンピオン!
素晴らしい!
興奮してハグしてもらったよ😭— 松本人志 (@matsu_bouzu) July 25, 2023
彼はいつも我々に感動を与えてくれます。
こちらこそホントにありがとうー✨ https://t.co/5SaopgPZoo— 松本人志 (@matsu_bouzu) July 26, 2023
布袋寅泰(ギタリスト)
井上尚弥チャンピオン‼️4階級制覇‼️おめでとう‼️最高の試合でした‼️慎吾トレーナー‼️大橋会長‼️本当におめでとう‼️#井上尚弥 #最高‼️ pic.twitter.com/QfB4Rupjmy
— 布袋寅泰 (@Official_Hotei) July 25, 2023
松本さんと並んで応援📣勝利の瞬間は2人で雄叫びを上げハイタッチしたよ🙌 #井上尚弥 #松本人志 #布袋寅泰 @matsu_bouzu @naoyainoue_410 pic.twitter.com/9O6vbWZg2r
— 布袋寅泰 (@Official_Hotei) July 25, 2023
海外の反応
ボブ・アラム(トップランク社プロモーター)
「これから先、長く語り継がれる試合だった。伝説的な選手になってきている」
マニー・パッキャオ(元世界6階級制覇王者)
「井上選手は素晴らしいスピードとパンチのパワーを持っています。彼は特別な戦士だ!」
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それでは、一週間経っても興奮醒めやらぬ試合後のまとめ記事をどうぞ!