『井岡一翔 vs 田中恒成』スーパーフライ級日本人頂上決戦!完全版

KJ
井岡一翔選手が9度目、田中恒成選手が2度目となる大晦日のリングに立ちます!

昨年の大晦日に開催されたWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチでプエルトリコ期待の若手、同級1位のジェイビエール・シントロン選手を見事なTKOで下して初防衛戦を成し遂げた井岡一翔選手。既にこの階級で4戦を戦い、攻防一体で好戦的なスーパーフライ仕様のスタイルを確立しました。

対する田中恒成選手は、史上最速タイのプロ12戦目で3階級制覇を達成。今年1月にWBO世界フライ級王座を3度防衛した功績で、同級スーパー王者に認定。これで階級変更後の指名挑戦権を獲得し、ベルトを返上。今年2月からWBO世界スーパーフライ級1位にランクされ、その時を待っていました。

ハイレベルな技術戦となるのか、それともヒット&アウェーに徹する挑戦者を王者が追いかける展開が待つのか、いずれにしても興味深い一戦になることは間違いありません。

コロナ禍で激動の一年の締めくくりとなる大晦日に繰り広げられる日本人男子初4階級制覇王者vs世界最速3階級制覇王者の激闘に注目です!

井岡一翔選手 vs 田中恒成選手

Kazuto Ioka vs. Kosei Tanaka

日程・会場

  • 2020年12月31日 木曜日
  • WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ
  • 王者:井岡一翔(Ambition)vs WBO同級1位:田中恒成(畑中)
  • 大田区総合体育館
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テレビ中継:TBS

2020年12月31日 木曜日 18:00〜

実況

  • 伊藤隆佑アナウンサー

解説

  • 山中慎介氏(元WBC世界バンタム級王者)
  • 内山高志氏(元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者)
  • 内藤大助氏(元WBC世界フライ級王者)
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ネットLIVE配信:Paravi

配信ページ

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データ

井岡一翔(いおかかずと)

生年月日:1989年3月24日 31歳
出身:大阪府堺市 大阪・興国高→東京農大中退
身長:164.2cm(昨年12月予備検診時)
リーチ:167.0cm(同)
アマ戦績:105戦95勝10敗(高校6冠獲得)
プロデビュー:2009年4月12日
プロ戦績:27戦25勝14KO2敗
獲得タイトル:日本L・フライ級、WBCミニマム級(防衛3)、WBAミニマム級(2団体統一)、WBA・L・フライ級(防衛3)、WBAフライ級(防衛5)、WBO・S・フライ級(防衛1)

田中恒成(たなかこうせい)

生年月日:1995年6月15日 25歳
出身:岐阜県多治見市 岐阜・中京高→中京大
身長:164.2cm(昨年12月予備検診時)
リーチ:164.0cm(同)
アマ戦績:51戦46勝5敗
プロデビュー:2013年11月10日
プロ戦績:15戦15勝9KO
獲得タイトル:東洋太平洋ミニマム級、WBOミニマム級(防衛1)、WBO・L・フライ級(防衛2)、WBOフライ級(防衛3)

スーパーフライ級世界王者

WBAスーパー ローマン・ゴンザレス(ニカラグア=V1)
WBC フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ=V2)
IBF ジェルウィン・アンカハス(比=V8)
WBO 井岡一翔(Ambition=V1)

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井岡一翔選手リモート記者会見(2020.11.9)

コメント

「こういう状況の中で試合ができるかどうか分からなかったんですけど、1年ぶりの試合にはなりましたが、年内にできるということで、試合をできる喜びを感じています」

ーー田中選手の印象は?
「特に印象はないですけど、実績のある選手で、3階級制覇している選手で、今回相手にとっても4階級制覇がかかっている試合なので、ボクも日本人初の4階級制覇の王者として、必ずそれは阻止しないといけない思っている」

ーーこの試合に向けて
「モチベーションは特にないです。WBOの指名防衛戦だからやるだけ。日本人の選手とやるのも久しぶりなので、日本国内が盛り上がればいいなとも思いますし、今回も内容と結果にこだわっていきたいと思います。レベルの違い、格の違いを見せたい。そうじゃないといけない」

ーー試合への意気込みは?
「大晦日という日もそうですし、久しぶりの1年ぶりの試合で自分と向き合う時間もあったし、練習する時間も基礎的なトレーニングでは結構長い時間できたので、そこを試合のパフォーマンスとして良いパフォーマンスを見せて、さらに強くなった姿を見せたいのと、格の違いを、レベルの違いを見せられたらいいなと思います」

ーーテクニックを争う試合になるか、気持ちを争う試合になるか?
「極端に言うと負ける気はしないので、どっちの展開になってもいいと思う」

「僕にとってメリットのない試合だと思っている。ただ、試合ができないかもという状況でタイミング的には良かったと思う」

「いろいろ考えましたけど、タイトルを保持していた方がそういう方向性(他団体王者との統一戦)に進みやすいのと思ったので、この試合をクリアしてそこに入っていきたい。そのためにも重要な試合になる」

ーー問われるのは?
「内容と結果です」

ーー田中選手の研究は?
「試合もほとんど見ていません。これからです。でも、どんな展開になっても負ける気はしません」

「ずいぶん前にスパーリングをしていますが、憶えていません。特に印象もなく、気にした選手でもなく、注目もしていなかった」

ーー格の違いとする根拠は?
「客観的に見て、そうでしょう」

ーーサラストレーナーとは?
「連絡を取り合いながら練習している。日本に来れるように調整してもらっている。でも、サラスにはアドバイスを受けるだけでかまわないと思います。日本のスタッフとともにやっていくつもりです」

「基礎的なトレーニングを長くできたので良いコンディションを保ち続けている。当日試合で見せたい」

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田中恒成選手リモート記者会見(2020.11.10)

コメント

ーー試合が決まった今の心境は?
「コロナウィルスの影響で、なかなかボクシング界みんな試合ができない中、自分もこうして決まって嬉しく思っているのと、こういう状況だからこそ日本人同士の試合というのがボクシング界も年末まで増えてくると思うんですけど、大晦日ということでそれを締めくくるに相応しい試合にしたいと思います」

ーー井岡一翔選手の印象は?
「ここ10年くらい日本のボクシング界を引っ張ってきた選手という印象です」

ーー「格が違う」という発言について
「井岡選手が今チャンピオンですし、4階級制覇もしているので、格という面では上かもしれないですけど、自分がこの試合に勝てばチャンピオンになりますし4階級制覇も達成するので、達成したらその辺は同じなのかなと。直接戦ったら俺の方が強いと思います」

ーー戦い方は?
「接近戦でも離れてもどっちでもいいなと。自分はどっちでもできるので。スタミナ、スピード、パワー、負けているものはないと思うので、その辺を使って勝負したいと思います」

「この階級は井岡選手を含めて強い選手がたくさんいる。そういう選手と戦っていくための入り口みたいな試合になると思います」

「この1年で技術面はかなりアップした。試合をみたらみんなを驚かせることができると思います」

ーー試合への意気込みは?
「俺にとってはキャリア最大の勝負だと思っているので、このチャンスは必ず掴みたいと思います」

「日本のボクシングを引っ張ってきたチャンピオンに挑戦するので。ここで世代交代というか、こういう試合を文句のつけようのないKOで決着をつけたい。この試合に勝って自分が日本のボクシングを引っ張っていくという気持ちがある」

「コロナウィルスでちょっと暗い世の中を少しでも明るくできるように、今年最後の試合として締めくくるのに相応しい試合をしたいと思います」

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予備検診(2020.12.29)

予備検診の主要結果は以下の通り。

身長
井岡選手:164.8cm
田中選手:164.6㎝

頸周
井岡選手:33.5㎝
田中選手:35.2㎝

胸囲
井岡選手:90.0cm
田中選手:84.5㎝

リーチ
井岡選手:169.0cm
田中選手:167.0cm

拳囲
井岡選手:左24.5㎝ 右24.2㎝
田中選手:左24.5㎝ 右25.0㎝

血圧
井岡選手:132/85mm/Hg
田中選手:127/80mm/Hg

脈拍
井岡選手:95回/分
田中選手:49回/分

体温
井岡選手:36.3℃
田中選手:36.4℃

視力
井岡選手:左1.5 右1.5
田中選手:左1.0 右1.0

コメント

井岡一翔選手

「まずは明日の計量でいいコンディションをつくりたい。試合が決まってからは不安なことのほうが多かったですけど、多くの方のサポートでここまで順調にこられた。結果で返したい。やってみないと分からないけど、体格やリーチが違うと戦い方も違ってくるので、そういう点ではいつもよりやりやすいかなと思う。これまでも言ってきましたけど、レベルの違い、格の違いを見せたいと思います。(コーンロウについては)特に意味はない。切りたくなかっただけ(笑)1年ぶりの試合でかなり気持ちとしても高まっていますし、多くの人に少しでも何かを感じてもらえるような、いいパフォーマンスを見せたいですね」

田中恒成選手

「最高の準備ができています。チームが一丸となって準備してくれたおかげで、コロナというマイナスな時期でも、一番良い練習ができました。おかげさまで落とす分が少しなくなったんで減量を含めてかなり調子が良い。今までとは体の変化も体調の変化も違います。当日は間違いなく良いパフォーマンスを見せることができます。本当に良い選手が相手なんで、すごい試合になると思う。自信はあるしKOを狙います。計量まであと1日あるので、試合まで気を抜かずに我慢してコンディションを整えたいですね。頑張ります」

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前日計量(2020.12.30)

WBO世界スーパーフライ級チャンピオン
井岡一翔(/18戦全勝16KO)
体重:52.1kg

WBO世界スーパーフライ級1位
田中恒成(畑中/21勝18KO無敗)
体重:52.1kg

コメント

井岡一翔選手

「まず、クリアできて良かったなと。いつもと違った状況の中で調整することは簡単なことではなかったけど、家族のサポートだったり、陣営のサポートがあって無事に良いコンディションで計量を終えて、明日試合ができるのは良かったと思います。当たり前のことが当たり前じゃなくなった状況で、いろいろな人に今まで以上に支えてもらっていると感じるので、僕ができることは試合で結果を残すことなので、期待してくださっている方やサポートしてくれた方に結果で返したい。(プレッシャーや不安は)全く無いですね。(田中選手から何か感じたか?)見下してるとかそいう気持ちないですけど、まったくというか、存在自体、そこまで気になってない。全然、気にはしてないです、存在自体が。全ては明日試合をして証明するだけだと思っているので、誰がチャンピオンなのか証明しますよ。格の違い、レベルの違い、ボクシングのレベルの差を見せれる試合ができたらいい」

田中恒成選手

「ここからはしっかりとリカバリーして明日に備えるだけ。何一つ不足のない調整ができた。汗を出す練習ではなくて、最後まで試合のための練習ができた。力が漲っている。調子がものすごく良い。(井岡選手の印象は?)特には。上体、分厚いなと思ったという感じですかね。この試合に勝って4階級制覇して世代交代ですね。自分にとって本当にビッグチャンス、転機になる試合。日本のボクシングのレベルって今すごく高いと思うので、自分が4階級制覇をしてボクシング界を引っ張ってきたい。このボクシング界の…なんて言うのかな、超実力派の新時代。引っ張っていく覚悟はできています。(井岡選手の格の違いを見せる発言について)そんなに気にしてない。俺、自信持ってリングに上がって勝つ気満々なんで。明日、自分の力見せたいですね」

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試合結果(2020.12.31@大田区総合体育館)

王者・井岡一翔選手〇 8回TKO ●同級1位・田中恒成選手

世界4階級制覇王者でWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔選手(31=Ambition)が前WBO世界フライ級王者で同級1位の田中恒成(25=畑中)を8回1分35秒TKOで下し、2度目の防衛に成功した。井岡選手が左フックでダウンを3度奪って決着をつける圧勝だった。戦績は井岡選手が26勝15KO2敗、田中選手は15勝9KO1敗。

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試合動画

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試合後選手コメント

井岡一翔選手

ーー試合を終えての感想は?
「有言実行できて良かったと思います」

ーーいろんなプラン、戦い方はあったと思うが、どういう感じ方、リング上での動きをしたか?
「ボクシングの幅であったり、組み立てだったり、自分がどういう展開になっても、すべて上回っているという自信を持って臨んだので。あとは気持ちの中で常に余裕を持って戦おうと思っていました」

ーー左目の腫れは?
「2ラウンドの右ストレートの終わり際の時に、思ったより、田中選手の右ストレートが伸びてきたので。予想外というか、しっかりもらってしまったので、そのパンチでちょっと目が見えづらくなってしまった」

ーー2021年に見据えるものは?
「前回と今回と指名試合、1位の選手に勝ったので、統一戦、3月にエストラーダとゴンサレスの統一戦があるので、その勝者とできる方向でいけたらいい」

ーー何が自分の中で体現できたか?
「余裕を持って戦えました。その中、緊張感という中で、2ラウンドにいいパンチをもらったことは予想外でしたけど、気持ちが折れたわけでもなく、この状況でも戦うしかないという気持ちだった」

ーーどのあたりで田中選手のパンチを見切れたか?
「最初から、結構余裕を持って、自分の距離とポジションで。相手に合わさずにできた。ラウンドを増すごとにはまっていっているなという気はしました」

ーーオープニングでワンツーをもらった。
「ミスりました。あそこで左フックを狙っては駄目。あのタイミングでフック出したらストレートをもらうとわかっていたけど、駆け引きで間違えました」

ーー左フック3発。イメージはあったか?
「全然してなかった。タイミングと一つのパターンの中。左フックを徹底して狙ったわけではない」

ーー1度ダウンを奪った後の戦い方。
「判定でも勝っていると思ったので、このまま余裕を持って戦おうと思っていた」

ーー試合前に強気なコメントをしていたが。自分への重圧は?
「もちろん常にプレッシャーはあるし、今までも変わらない。絶対勝つ、負けないという気持ちでやっているが、結果、負けても勝っても、自分のプレーに全力で取り組んで、それでもし負けてしまったら、納得できる負けだと思う。僕は自分のプレーに集中して全力を出し切るという気持ちだけだった。

ーー強い言葉を発してきた真意は?
「僕が日本人初の4階級制覇のチャンピオンとして、ここで彼を、4階級制覇させてはいけないと思っていたし、やる限りは若い選手に負けずにトップで君臨し続けるという気持ちもある。格が違う、レベルが違うと言っていたことは本音。言うだけなのは簡単なんで、あとは言ったなら実行するのみ。実行できて良かった」

ーー試合後の田中選手との会話は?
「田中君が『完敗ですと。全然歯が立たなかったです』というニュアンスの言葉を言ってきてくれた。僕はあと何年かという終わりに近づいてきていると思うが、彼はまだ25歳。まだまだこれからの選手。彼も日本ボクシング界を引っ張っていってくれる選手の一人だと思うので『これからまた頑張ってくれ』と伝えました」

ーー田中選手にリング上で拳で伝えられたものは?
「拳の重みじゃないですかね。背負っているものであったり、勢いだけでは勝てないという経験は、僕の方が年重ねている分、拳の重みが違かったのではと思う」

ーー今後、描いているものは?
「もしかしたらきょう負けていたら、引退していたかもしれないし…。自分で終わりたくなくても、“井岡は終わった”と思われる日が来ると思う。なるべく自分の中で納得する形で、やり切る形でやりたい。今年9度目の大みそかでまた勝ったことで、節目の10回目頑張ってみようと。その中の次は統一戦をしたいですね」

ーーご家族とは会ったか?
「リングに入場した時に、久しぶりの家族の顔を見て泣きそうになった」

ーー夫人から言葉は?
「終わってさっき会って、カッコ良かった、強かったって。妻も凄いプレッシャーの中で一緒に戦ってもらっていると思っているので、ホッとしたと言ってましたね」

ーー麿永翔(まなと)君は?
「いやー。久しぶりに会って。息子は全部、パパのことは“ママ”って言うんですけど、言ってるイントネーションでパパとママの呼び方が僕は分かるんですけど、リングに上がった時に“ママーッ”て言ってて、僕のことをパパって言いたいんだろうなって。それが聞こえた時は、試合前からいろんな感情が込み上げてきましたね」

一夜明けリモート会見

ーー夜明けて体調は?
「多少、疲労もありますけど、いつもと変わらない状態です。8ラウンドで終わったので12ラウンド闘ったよりは疲労感は少ないです」

ーー改めて試合を振り返って。
「試合前から結果で証明すると言い続けていたので、格の違い、レベルの違いを見せられたんじゃないかと思ってます」

ーーどんなプランで試合に臨んだのか?
「いろいろサラス・トレーナーだったり佐々木トレーナーから細かいボクシングの戦略はあったんですけど、自分の中では、それを遂行することもそうですけど、どんな展開になっても絶対に負けないと思っていたので、冷静に余裕を持って闘えたと思います」

ーー実際に対峙した田中選手の印象は?
「強かったですね。良い選手でした。スピードも評判通り速かったし、パンチ力もそこそここそあったし、上下の打ち分け、コンビネーションとかうまくて全体にレベルの高いバランスのとれた選手だと思いました」

ーー若い田中選手に試合を通じて伝えたいものはあったのか?
「伝えたいというより、単純に僕個人としてやってきたことが違うと思っていたし、時間としても違うので、。ここで、この時代に(拳を)交えることになったのなら、僕が阻止して、田中君のボクシングキャリアに僕が黒星をつける。それしかないと思っていました」

ーー2020年を振り返って。
「みんなが初めての経験ばかりで、僕もそうでしたし。でも、大みそかという最後の日に試合をして、その1日だけですけど、その1日で1年が無駄じゃなかったんだなというか、いろんなことを信じてやってきて形にできて良かったなと思ってます」

ーー昨日の試合の反響は?
「まあ連絡をもらったり、応援してくれている方から『いい試合だった』と言ってもらいました」

ーーお正月はどう過ごす?
「いつもだったら海外旅行とか行ってたんですけど、こういう時期なので日本でゆっくり、家族と過ごしたいなと思ってます」

ーー改めて2021年の目標を。
「統一戦ですね。他団体のチャンピオンと統一戦がしたいです」

ーー3月にロマゴンとエストラーダが対戦する。
「その勝者と対戦を希望したいです」

ーー試合を決める直前の場面で挑発するような動きも見られた。
「田中君が気持ちで来ていたので、気持ちで返さないといけないと思った。足を使うこともできたけど“よし、打ち合おうか”という感じで誘ったのは覚えています」

ーーこの勝利で統一戦に向けての自信は高まったか?
「高まりました。田中選手に勝ったことより、試合の中で自分がやってきたこと、進化した部分が出せたことは僕自身、成長を感じたし、自信にもつながりました」

ーー映像を確認して実際に闘った感覚とのズレや新たな発見はあったか?
「意外と闘っている感覚と映像の感覚は変わらなかった。若干の判断ミスもあったけど、試合中に修正できたし、やっている感覚と映像の再認識できた」

ーーエストラーダとロマゴンはどちらが勝つと思うか?
「ちょっと前まで自分の中ではエストラーダの評価が高かったんですけど、最近はロマゴンの地力というか、元々の強さがあるなと感じているし、エストラーダがいいパフォーマンスできていないと思うし、僕はロマゴン有利かなと思います」

ーー今後はこの2人をイメージしてトレーニングするのか?
「イメージは最後の戦略の中でなので、今は僕のボクシングの質だったり、いろんな部分を高めて、まだまだ伸びると思うので僕自身の成長をしっかり、進化できるようにやっていきたい」

ーー今の井岡一翔で勝てる?
「勝ちます。僕しかいないです。勝てるのは」

ーー進化するためのには必要なことは?
「自分自身とどれだけ向き合い、感性を高めていくかだと思う」

ーー試合を通じて新たな発見は?
「細かい発見ばかりですけど、ありました。距離の微妙なところとか、体の位置とか。体の使い方が一つ一つがつながって理にかなっていると感じたり」

ーー左目の状態は?
「少し腫れが残ってますけど、普通に見えてます。試合後、医務室で見てもらった時は特に問題ないということだったんですけど、念のため、ちょっと落ち着いたら検査に行こうと思っています」

田中恒成選手

「完敗です。認めざるを得ない。こんなに差があったのかとびっくりしました。序盤から行こうと思っていました。1ラウンド目は取れたと思いました。(KOについては)同じパンチに3回やられたんだから。でも、何で倒されたかより、倒されても行くしかないとしか思っていなかった。どのパンチで倒されたとかは考えてなかった。悔いはないです。(井岡との差が埋まるとは)今は思わない。負けたばかりなんで。また頑張ります」

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ボクシング関係者・著名人のコメント

大橋秀行氏(元WBA・WBC世界ミニマム級王者)

緊張感のある素晴らしい試合だった。田中はスピードを生かした最高の立ち上がりだったが、井岡はそれに慣れるまで、無理をせずに冷静に戦っていた。完璧なディフェンスで3回に見切ると、そこから、ノーモーションの左ジャブでペースを奪い返した。打ち終わりに田中の右ガードが下がるところを狙うのは作戦通り。実行しきるのは、キャリアのたまものだと思う。接近戦の技術もさらに上がっていた。大振りをせず、左右のアッパー、ショートの右フックを多彩な角度で当てる、理詰めのような戦いで追い詰めていった。

田中はスピードは抜群だが、野球のピッチャーにたとえると、160キロの直球を投げ続けているような印象で、もう少し緩急がほしい。ただ、勝つんだという気迫は見ている人に伝わったし、次につながる負けだと思う。コロナの影響で明るい話題が少ない1年だったが、最後に見ていて気持ちいい、これぞボクシングという試合を見せてもらった。

浜田剛史氏(元WBC世界スーパーライト級王者)

田中の試合の入り方は良かったと思う。井岡もいいパンチをもらっていた。ただ、このままでは流れを持っていかれると判断し、ブロックしつつも左のフックを打ち返していたのがよかった。打つことによってタイミングが少しずつ合い始め、田中が強引に打って出たところでカウンターでダウンを奪った。

試合前に予想した通り、両者の打たれ方の違いが出た。田中は攻撃も真っ正直だが、打たれる時も顔がまともに見えていた。一方の井岡は打たれる時には顎をしっかり引いているし、極端にいえば打つ時も相手の顔をまともには見ていない。ボディーから顔面へパンチを返す時も顔の位置を感覚でつかんで打っている。そして、打たれたら打ち返さなくてはとムキになり、さらにカウンターをもらった田中に対し、今は打ち返すべきかの判断もしっかりしていた。世界戦は12回までのトータルで勝つと計算しながら闘っていた。

田中はスピードもパンチもあり、井岡にとっても楽な試合ではなかった。だが、キャリアと我慢強さという点では一枚上だった。自分の強さを前面に押し出し闘う田中に比べ、相手の力も利用する井岡が大人に見えた。

長谷川穂積氏(元世界3階級制覇王者)

井岡選手はこの階級で自分より体が大きい選手やパンチが強い選手に対応してきた自信が試合で表れていた。スピードでは田中選手が上回ったが、井岡選手にとっては下の階級から上がってきた選手で、スピードに慣れてしまえば戦いやすい選手だったのだろう。

お互い緊張感のあるいいスタートとなった試合は、僕が戦前に予想したとおりハンドスピードで戦う田中選手と、ガードをしっかり堅めてタイミングのいいジャブを飛ばす井岡選手という構図となった。僕の採点では4回までドローだった。

5回に相打ちの左フックに倒れたのは田中選手。これにはタフネスの問題もあるが、ハンドスピード重視の打ち方では、どうしても重心が浮いてしまう。どっしりと構えて打つ井岡選手とはパンチのもらい方に差が出たのかもしれない。

田中選手のハンドスピードは大きな武器だが、結果論で言えばハンドスピードをメインに戦うということは、その分全てのパンチが軽くなるということ。この階級での自分の戦い方をもう一度探し、フィットさせる必要があると思う。

ただ、6回に左フックで2度目のダウンを喫しても前に出て勝利を1ミリもあきらめなかった精神力は、3階級王者のものだった。井岡選手もこの階級の最初の王座戦で負けて、今のスタイルを作り上げた。この敗戦が田中選手にも、未来の4階級制覇への糧に変わると信じている。

山中慎介氏(元WBC世界バンタム級王者)

井岡の対応力が際立った。井岡はうまさもさることながら戦い方を良く知っている。左ジャブを軸にスピードある攻撃を仕掛けた田中だったが、ラウンドを重ねるごとに井岡が攻防で上回った。意識の高いガードと、反応の良いポジショニングで相手のパンチをずらす防御をして、パンチは特に速いわけではないが、出すタイミングが独特で、距離の取り方や合わせ方が絶妙にうまかった。

右ショートを織り交ぜて田中の出足を崩すなどコンビネーションも多彩だった。3度痛烈なダメージを与えた左フックは反応が素晴らしかった。田中が良さを出せたのは序盤までで、持ち味のスピードで踏み込み、一気に間合いを詰める動きを見切られると、以降は全て井岡のペースだった。

総合力で厚みが増し、王者としての安定感も備わってきた。WBA王者ゴンサレスとWBC王者エストラーダの統一戦の勝者との対戦が実現できれば面白い試合になるだろう。

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