『高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。スタジオジブリ・レイアウト展』開催概要・用語・様子・グッズ・巡回情報・感想など!

スタジオジブリ・レイアウト展

高畑勲・宮崎駿両監督が築き上げてきた、スタジオジブリ。
宮崎監督による「風の谷のナウシカ」(1984年)に始まり、2013年には「風立ちぬ」(宮崎監督)、「かぐや姫の物語」(高畑監督)と、それぞれの集大成というべき作品が完成しています。
今回ご紹介する「レイアウト」は、一枚の紙に背景とキャラクターの位置関係、動きの指示、カメラワークや撮影処理など、そのカットで表現されるすべてが描かれた、映画における設計図にあたるものです。
アニメーション制作におけるレイアウトは、作品の統一感を保つ上で重要な役割を果たしており、そこにはキャラクターの疾走感や躍動感、映画的な空間構成までもが表現され、作り手たちのイマジネーションにあふれています。
本展では、アニメーションの魅力が詰まった「レイアウト」を読み解きながら、高畑・宮崎両監督の仕事を中心にスタジオジブリ作品の秘密に迫ります。

展覧会概要

レイアウトは、一枚の画としてみると歪んで見えるかもしれない。 しかし、アニメーションでは、嘘をつかなくちゃいけないわけです。 我々は、どうやって、一枚の画、平面で、視覚の変化を、いかに実際に近いように感じさせるかというところなんです。 高畑 勲

アニメーション映画というものは、”あやかし”。 どうやってあやかされるかが楽しみなんです、見ている方も。 宮崎 駿

アニメーションは実写の映画とは違い、登場人物やその背景、雨や風などの自然現象にいたるまで、すべて一から描かなくてはなりません。その表現方法が全て詰まった「レイアウト」をあなたも読み解いてみませんか。

レイアウトとは?

ハウルと動く城のレイアウト
レイアウトは,絵コンテを元により細かな設定や塗り線,パンの方法などを設定したもの。

もののけ姫のレイアウト
多くは鉛筆や色鉛筆で書き込みがされている。

レイアウトを読み解くと、アニメーションの動きが見える!

レイアウト用語

①フレーム
赤線で囲まれた、実際に画面に映る範囲のこと。カメラの動きを伝える場合は、「スタートフレーム」と「ラストフレーム」がある。
②PAN(パン)
カメラの位置は固定したまま、レンズを上下、左右に振って撮影すること。
③望遠風です
「この建物の絵が望遠鏡を覗いたときのように、距離感をあまり感じないように描きましょう」という指示。アニメーションの専門的な用語以外にも、監督のメッセージが書き込まれている。
④BG(ビージー)
セル画(透明のプラスチック製の板に描かれた絵)の後ろに置かれる背景画のこと。
⑤スーパー
明るく光ったような効果を出す撮影方法。
⑥Book(ブック)
画面の手前にくる背景のことで、通常の背景画とは別の画用紙やセルに描く。
⑦クミ線
実際には隠れて映らない部分のこと。この他、
カゲダブラシ(Wラシ)
透き通って見えるように表現するために、二重に露出を行う撮影方法。例えば、影で周囲より暗くなったような表現をしたいときに使用。
Follow(フロー)
キャラクターの動きなどをカメラで追うこと。例えば放った矢に対して、1K(コマ)7ミリとある場合は、1秒間に168ミリで追う。1秒間のコマ数は24なので、7×24=168ミリということ。
などがあります。

展示会に行かれる際は、この用語と意味を頭に入れておくとより楽しむことができるでしょう!

展示会の様子

スクリーンを使用したわかりやすい展示も。
レイアウトのシーンの完成映像と見比べながら見ることができます!

宮崎監督ら直筆のレイアウトも多数展示
レイアウトは多くの人によって描かれていますが、中には宮崎監督の直筆のものも。

トトロやネコバスの影もチラリ
作品に注目していたら気づかないかも!?細かいところまで演出されています。

どこかで見た廊下ですね!
合わせ鏡でどこまでも続いているように見えます。

約1,400点ものレイアウトを余すことなく展示!

天井いっぱいまで敷き詰められたような「千尋」のコーナーはその画の迫力に圧巻です!
この部屋に入ったとたん、誰もが「わあ・・・!」と声を上げます。その迫力に圧倒され、どれから見ていいのかわからず立ち尽くしてしまいます。ひとつひとつに作品の息吹が宿っています。

ぜひ足を運んでみて、実際に目で見てください!

展示会グッズ(一部掲載)

巡回情報

  • 2008.07.26(土)- 2008.09.28(日)東京都現代美術館
  • 2009.07.25(土)- 2009.10.12(月)サントリーミュージアム[天保山]
  • 2010.02.20(土)- 2010.04.18(日)徳島県立近代美術館
  • 2010.04.29(木)- 2010.06.13(日)松坂屋美術館
  • 2010.06.26(土)- 2010.08.29(日)札幌芸術の森美術館
  • 2010.10.09(土)- 2011.01.10(月)青森県立美術館
  • 2011.02.26(土)- 2011.07.03(日)福島県立美術館
  • 2011.07.15(金)- 2011.09.04(日)熊本県立美術館
  • 2011.09.16(金)- 2011.11.27(日)松本市美術館
  • 2012.11.17(土)- 2013.02.04(月)秋田県立美術館
  • 2013.02.22(金)- 2013.05.06(月)沖縄県立博物館・美術館
  • 2013.06.22(土)- 2013.09.22(日)芸術の殿堂(ソウル)
  • 2013.10.12(土)- 2014.01.26(日)福岡アジア美術館
  • 2014.05.14(水)- 2014.08.31(日)Hong Kong Heritage Museum(香港)
  • 2014.10.04(土)- 2015.03.01(日)Art Ludique Le Musée(パリ)
  • 2016.04.23(土)- 2016.06.22(水)愛媛県美術館
  • 2016.07.16(土)- 2016.10.10(月)新潟県立万代島美術館
  • 2016.11.19(土)- 2017.02.05(日)静岡市美術館
  • 2017.04.20(木)- 2017.06.18(日)山口県立美術館
  • 2017.07.15(土)- 2017.09.03(日)長崎県美術館
  • 2017.12.08(金)- 2018.03.11(日)福井県立美術館
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KJインプレッション

2018.03.09@福井県立美術館

平日、生憎の雨天ながら駐車場は大混雑。

小トトロがお出迎え。

記念撮影ポイント。

記念撮影ポイントその2。

ポニョのバケツ。

こだまも出没。

ここにもこだま。

合わせ鏡の回廊。普通に写真を撮ってる人が多い。自分がこうやって撮っていると「アッ」という声多数(笑)

 

湯屋!精巧です。こういう展示最高!

来場者の方が書いたまっくろくろすけ。アメリカの超有名な某ネズミとか他のキャラクターがいますね(笑)

トトロのお腹で写真も撮れます。

グッズ売り場も盛況です。

感想

福井県立美術館の開館40周年記念特別企画展「高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。スタジオジブリ・レイアウト展」を鑑賞してきた。

実は正直、それほど大きな期待を抱いていたわけではなかった。幼い頃から無意識ながら高畑勲・宮崎駿両氏が手掛けるアニメを見て育った世代であり、ルパン三世や未来少年コナン、アルプスの少女ハイジ、じゃりン子チエなどはおそらく再放送だったと思うが毎週見ていた記憶が今も鮮明に残っている。以降のスタジオ・ジブリの作品も大好きだし、その関連イベントとなれば当然のごとく興味がわくというもの。

けれども、これがどのようなイベントなのか把握していなかった。完全にミーハー心しかなかった。そもそも「レイアウト」とは何かについて、まるで理解できていなかったし、絵コンテのようなものだという認識しかなかった。実際に会場で多く聞かれる声の多くは、美術作品のように捉えられているものが多かった。「途中段階なのにこれほど精巧に描かれているのか」「本当に絵が上手」「あのシーンのあのカットだ」もちろん、そうした楽しみ方もまた間違っていないし、否定するものではない。

けれども、技術屋の端くれである自分の目に映るそれは、完全に「図面」だったのである。レイアウトとは、まさに工業製品における「組立図」と同じなのだ。デザインを表す図は、もちろん美術的に見てそれだけで大変素晴らしいクオリティである。それに加えて、そこに映る1つのレイアウトが、どれだけの単品図で構成されているのか、どの部分がどれくらいの速度で、どのような軌道で動き、どの部分がどのような状態のまま動かないのか、どの部分にどのような光を当て、その照度はどの程度なのか。色合いは?そこにできる影は?

作品の”設計者”である高畑勲氏や宮崎駿氏のそうした意思が、余すところなく伝わる「アニメーションの設計図」。それこそが「レイアウト」なのである。

確かに途中段階としては想像を遥かに上回る素晴らしいクオリティで描かれるイラストに、作家の様々な意思が具体的な指示として加えられることで、それらを併せて見るとまさにイラストが脳内で「アニメーション」として動き出す。そこから感じられる空間のリアリティや疾走感、躍動感たるや、完成した作品にも引けを取らないものだ。

福井県立美術館での開催期間は残すところこの週末だけとなったが、機会があれば是非とも足を運んでみてほしい。プロフェッショナルの「ものづくり」に触れることのできる、またと無い素晴らしい体験となる筈だ。