『アッサン・エンダム vs 村田諒太2』日本人五輪金メダリスト初のプロ世界王者誕生!世界ミドル級史上最速戴冠!完全版

アッサン・エンダム選手 vs 村田諒太選手

Hassan N’Dam N’Jikam vs. Ryota Murata

  • 2017年10月22日 日曜日
  • WBA世界ミドル級タイトルマッチ
  • 王者:アッサン・エンダム(フランス)vs同級1位:村田諒太(帝拳)
  • 両国国技館

試合結果

WBA世界ミドル級タイトルマッチは同級1位の村田諒太選手(帝拳)が王者アッサン・エンダム選手(フランス)に7ラウンド終了、エンダム選手の棄権によるTKO勝利をおさめ念願の世界王座獲得を果たした。5月に行われた初戦の悔しさを見事晴らした村田選手は13勝10KO1敗、防衛に失敗したエンダム選手は36勝21KO3敗となった。なお7ラウンド終了時の採点は3対0(70-63、69-64、68-65)でいずれも挑戦者村田選手の優勢としている。

試合動画

両選手のコメント

勝者:村田諒太選手

勝者インタビュー(TV中継より書き起こし)

-それでは日本の皆さん、チャンピオンインタビューです。WBA世界ミドル級新チャンピオン村田諒太選手です。おめでとうございます。
「ありがとうございます」

-遂にこの日、この瞬間、この場所に辿り着くことができました。日本の皆さんに一言報告してください。
「今回の試合のTシャツを買っていただいた方もいると思うんですけど、“MAKE THiS OURS”です。皆さんで作った勝利です。ありがとうございます」

-村田諒太選手が泣いている姿、初めて見ました。
泣いてません(キッパリ)」(場内爆笑)

-泣いていないとしたら、零れ落ちたもの、どんな想いからでしたか?
「それは(フジテレビアナウンサーの田中)大貴さんが幻覚を見ていただけです。他の人は見ていない筈です」

-(苦笑)ただ、勝った瞬間に皆さんに「ありがとう」という風に叫んでいました。その想いを教えてください
「デビューした年の12月に両国で試合をさせてもらった時に全然良くない試合で、皆「こんな奴チャンピオンになれない」と思って見捨てられると思っていたら、こうやってまた見に来てくれて本当に感謝しています。ありがとうございます」(場内大歓声)

-結果はTKO勝利。5カ月前の自分に勝ちましたね。
「そうですね。自信を付けられたのが一番大きかったと思います。何よりこの試合を作ってくれた本田会長をはじめチーム帝拳のみんな。そして皆さんあまり好きじゃないかもしれないけど電通のみんな。(場内爆笑)そして、またあまり好きじゃないかもしれないけどフジテレビの皆さん。(場内爆笑)本当にみなさんのおかげです。ありがとうございます」

-ありがとうございます。振り返ればあの5月20日から155日が経ちました。この期間、本当は怖かったんじゃないですか?
「そりゃあ皆こうやって追いかけ回すじゃないですか!…怖いですよ(笑)」

-どんな心の動きだったんですか?
「ただ、やることは決まっていますし、金メダルもそうでしたけど、過ぎてしまったら大したことではないので、一歩踏み出す勇気が重要だと思っていたので、それをずっと胸に決めていました」

-そして、ダイレクトリマッチとして戦ったアッサン・エンダム選手というファイター。改めてどんなファイターでしたか?
「やはり友人です。初めてできた友人だと彼は言ってくれますし、僕もそう思っています。これは高校の恩師が言っていたことですが『ボクシングで試合に勝つということは相手を踏みにじって、その上に立つことだ。だから勝った人間には責任が伴うんだ』と。だから彼の分の責任も伴ってこれからも戦いたいと思います」(場内大歓声)

-日本のファンはもうご存知だと思いますが、オリンピックの金メダリストが(日本ボクシング)史上初めてチャンピオンベルトを巻きました。今この景色は村田選手しか見ていない景色です。どんな景色ですか?
「金メダルの時に思ったことは、獲ってしまった後からが大変でした。このベルトというのも撮ってしまってからが大変だと思っています。今は4団体ありますし、色々なチャンピオンがいます。ボクシングを大好きな人は僕より強いミドル級チャンピオンがいることも知っています。(場内から「ゴロフキンか?」の声)そう。そこを目指して頑張りたいと思います」(場内大歓声)

-4年前の4月にプロ転向表明、会見を行いました。大きな挑戦だったと思います。今あの時の自分に声をかけるとしたらどんな言葉になりますか?
「『ちゃんと会長の言うこと聞け』と(笑)」

-さぁ、これからまた新たな挑戦が始まると思いますが、チャンピオンとしての次のステップを最後に教えてください
「先程も言いましたが“MAKE THiS OURS”、これもみんなで作ってくれたものです。これからも皆さんと一緒に作っていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします」

-新チャンピオン村田諒太選手でした。ありがとうございました。
「ありがとうございました」

トーク(TV中継より書き起こし)

-改めましてWBA世界ミドル級新チャンピオン村田諒太選手です。おめでとうございます(三宅アナ)
「ありがとうございます」

-試合が止まった、勝った、あの瞬間、改めてどうでしたか?
「嬉しかったというかビックリしました。ただ、相手に余裕がなかったのはわかっていて、このまま攻め続けようと思っていた矢先だったので。こっちも疲れていたのでラッキーと言えばラッキーでした(笑)」

-結構疲れていたんですか!?
「僕もやっぱり少しキツかったですよね。まぁでも、まだまだいける段階でしたけど」

-今日はそれほどボクシングに詳しくない方も観てらっしゃるかもしれません。このベルトというのは世界のボクシング界でも本当に選手層が厚くて、激選区と言われるミドル級のチャンピオンベルト。そしてオリンピックの金メダリストが世界チャンピオンになったのは日本初めての快挙。これ香川さんまさに歴史を作った
香川照之「素晴らしいね!素晴らしい!もう生きてる間に無いですよ、我々が。この日は。無いですから。本当にありがとう!」

-香川さんからも是非村田選手に声をかけてあげてください
香川「村田選手もおっしゃってましたけど、やっぱりフジテレビ・電通はじめ、これだけ多くのスタッフを引き連れ、その責任が全部その肩に乗って、また5月の試合でああいう事があった事でボクシングを観ないファン達、日本中の国民の期待を惹きつけ、日本中全員がこの勝利を喜んでくれてると思うんですよ。本当にこの勝利を皆が喜んでこれだけの選手がボクシング界に現れてくれたことに私は本当に感謝したい。本当におめでとう。心からおめでとうございます。素晴らしい日をありがとう」
中村アン「会場の声援も凄かったんですが、村田選手、試合中は後押しの声は聞こえましたか?」
「ヤジられることはあっても、こんなに応援されることって無かったので…」
-(一同)そんなこと無い(笑)
「本当に嬉しかったです(笑)」

-ただ、ダイレクトリマッチというのは香川さんも話してらっしゃったんですが、決して簡単なものでは無い
香川「決して良い結果だけではないですね。これをやっぱりTKO、この結果をもたらしたということが凄いです。3人のジャッジに仕事をさせなかったわけですから。もう素晴らしい最高の結果です」

-村田選手自身はどうですか?その辺のプレッシャーというのは実際あったんですか?
「もちろんありました。ただ、考え方を変えれば、この舞台に立てる。立ちたくても立てない選手がいっぱいいる中で、同じ実力でも。だから、ありがたいことだと思わないといけないと思っていたので。その気持ちが強かったです」

-かなり疲れたという風におっしゃってましたけど、エンダム選手もなかなか戦い方を変えてきて、今日は香川さん、結構クリンチもあったりしてね
香川「前半は特に興味深く観ましたけど、今日は本当に、前回の色々なものを踏まえて、左ジャブよく出たし左フックも狙えたし左ボディを必ず正面から狙ってたし、6ラウンドの右ストレートも正面から入れたのも手応えあったと思うんですよ。全部が色々試せて今までの14戦の中で最高の村田選手の力が見えたと思う。今日は入場してきた時から本当に風格があったの。今までの村田選手で一番風格があったの。顔が王者になる顔をして現れてきたんで、半分以上僕は安心してたんだけど。素晴らしい結果にありがとう」
「(笑)ありがとうございます」

-入場の頃から今日の試合というのは何かちょっと違う感じはあったんですか?
「特にっていうことは無いですけど、会長に『飲んでいくんだぞ!相手のことなんて!』と言われていたので『負けるわけねーだろ』という気持ちではいました」

-前回色々なことを反省してこのリングに上がったと思います。それをどういう風に出していこうと思って、そしてそれがどんな風に出ましたか?
「結局、何か大きく変えることは無いって言った通りになったと思うんですよね、僕のボクシング自体は。良いところで結局勝負するしか無いんで、それはもう全面に出していくことを練習してきましたし、本当に良い結果が出て良かったなと思っています」

-エンダムは前回と違いました?
「やっぱり変に足を使って…僕の右のアジャストする距離だったら危ないと思ったんでしょう。僕は右を長い距離で打つんで、その分相手が距離を潰してきたんで、やっぱりちょっと違いました。考えていたと思います」

-香川さんはその辺のテクニック的な部分ではどんな風に観ましたか?
香川「今日は右の打ち込む範囲が凄く広い感じがしたんで、エンダムが多少顔がブレても全部そこにブワーッていく感じがして、打ち下ろしのオーバーハンドな右も本当に快くて本当にとても良かった。本当に見ていて惚れ惚れした」
「(笑)ありがとうございます」

-さっきリング上で「僕は泣いてません」っておっしゃってましたけど(泣いているシーンが流れる)これが決まった瞬間の表情ですね。観てみましょう。村田さん観てください。この表情ですがどうですか?
「画面が小さくてわからないです」
-(一同笑)

-顔を歪めたシーンを観て僕らもグッときましたけれども
中村「そうですね。あまり今までに見たことのない表情だったので、何か凄くこうグッときましたね」
「今までに獲ったことの無いベルトだったんで、今までに無い表情になりましたね。ただ、泣いてはないですよ」

-表情が歪んだだけですね?色々な想いがあって
「はい。初めての表情になったと」

-今実際にそのベルトを巻いてらっしゃるわけですよ
香川「似合うねー黒いベルトが!WBAの黒いベルト!似合うねー!最高だよ!」
中村「カッコイイ」

-このベルトを巻いてる姿を見せていただけますか?このベルトです!前回獲れなかった!
香川「最高だね」

-5ヶ月経ってようやく今腰にやってきました!どうです?
「やっぱり嬉しいです。そして本当にサポートしてくれた皆さん、応援してくれる皆さんに本当に感謝したいですね」

-このベルトを持って、今日獲っていきなり先の話をするのもなんなんですけども、やっぱりさっきインタビューでもおっしゃってましたけど、まだまだ先を当然村田さんは考えていらっしゃるわけでしょう?
「そうですね。やっぱり金メダルもそうでしたけど、獲ったところがスタートっていうところはあるんで、だから本当はもう疲れたんで『辞めたい』って言いたいくらいですけど、ここから責任が発生すると思っていますので、この責任をしっかり持ちながら頑張りたいですね」

-さっき香川さんと聞いてて「良いこと言うなぁ」と話をしていたのは、エンダム選手の分もという…
香川「『彼の責任も持とう』という『良いこと言うなぁ』と思って。フジテレビのアナウンサー達、全員泣いてましたよ。それ聞いて」

-でもやっぱりそれくらいの覚悟というか、それを持って戦ってるわけですよね
「そうです。これは高校の先生の教えです。京都で同じ高校同士で試合をして潰し合ってインターハイに出れる子と出れない子がいた中で、そいつの分も頑張るんだという気持ちを持てってずっと言われていたんで。それは幼い頃に植え付けられた教訓なんで大事にしないといけないですね」

-これからやはりこのミドル級の王者というものを自分でいろいろ作っていかなきゃいけないと思うんです。村田さんなりに思う王者像、こういうものなんだっていうのがあれば教えてもらいたいんですけど
「チャレンジしていきたいです。チャンピオンになってただ胡座をかくのではなくて、チャレンジすることでしか何も得られないので、どんどんチャレンジしていきたいです」

-具体的には何か頭の中にあるものは?
「いや、もうそれは会長とボブ・アラムさんと話をして全て決めていけばいいと思っています」

-香川さん、ファンとして村田選手に今後どんなチャンピオンになってほしいか、どんな風にこれから歩んでいってほしいか
香川「日本のサイズではなくなるわけですよ、今日を境に。世界チャンピオンになって、より世界で活躍する選手になる。そして今日、ボブ・アラムさんが村田選手に凄く激励をしてて、何をおっしゃったかわかりませんけど、ボブ・アラムさんの頭の中ではカチカチカチカチと動いてると思いますよ。日本のエースがこれから楽しみです」

-世界的プロモーターと言われるボブ・アラムさんが、わざわざデビュー戦以来、この日本に再びやってきてこの試合を観たと。これはやっぱり村田さんにとっても一つ大きな意味を持つことではないですか?
「そうですね。前の試合を評価していただいて、次にステップをということで期待して観に来てくださったと思うので。まぁ『皆してプレッシャーかけてくれるなぁ!』と思いましたけど(笑)」

-このプレッシャーがあって強くなっていくということもあるんじゃないですか?
「そうですね、やっぱりそういうプレッシャーというものが無いと人間、自由にもなれないし、それが強さをくれるんです」

-我々はこれからも村田選手の駆け上がっていく様を追い続けます!
「引き続き宜しくお願いします。ありがとうございました」

プレス会見

-ベルトを獲った実感は
「前の試合の時に勝った夢を見た。今日勝った瞬間に夢じゃないよなと思った」

-7回終了で終わった
「このままいったら諦めるかもしれないと思っていた。チャージを続けようと思った。少し予想がありながらも、少しビックリ。素直にうれしい」

-ベルトの感触は
「思ったよりも重い。自分にのしかかる重さだと思う」

-勝利の瞬間、表情が崩れた
「ずっと追い続けてきたものがかなった時のうれしさは…。説明できます?」

-どうすれば責任を果たせるか
「勝ち続けていくこと。一歩一歩上がっていくしかない。謙虚に堅実に一歩一歩進んでいくしかない」

一夜明け会見(帝拳ジム公式サイトより)

「凄く嬉しいですね、(リングコール時に)ジミー・レノン Jr. さんに名前を呼ばれている時には盛り上がって居る自分が居たり本当に嬉しかったですね。(作戦的には)本田会長から相手を呑んだつもりで行け、こんなレベルでもたついている暇は無いくらいの気持ちで行け、と言われながら試合を迎えましたが、初戦の時からしっかりと気持ちを切り替えて行けたのが良かったし、それが良い形で出たかなとは思います。」

-相手が棄権した瞬間は?
「ストップとなった時は嬉しかったです、あそこで終わらなくても僕はチャージを弱めるつもりは無かったし、あのまま耐久戦になったとしてもプレッシャーを止めるつもりもありませんでした。」

-今後の予定について?
「まだ他にもチャンピオンは居るし、強い選手も多く居ます。でも海外では村田諒太って誰?というレベルだろうし、じゃあ今、カネロやゴロフキンという名前を出したところで、誰だよ、お前は?って言われるレベルなのは分かっているので、着実に自分の価値を上げて行けるような、名前を挙げていけるような対戦相手と戦って行きたいです。チャンピオンになったと言ってももっと上のステージに行けるよう謙虚に1歩ずつ歩いて行くつもりです。

オリンピックの金メダルもそうでしたが、こうしたものは獲った瞬間はそれほど重みというものは感じなかったんですけど獲ってからその重たさに気付くというか、感じさせられるものだと思っています。世界タイトルを獲ったからといって、もっとしっかりとトレーニングを積み重ねて行くことを忘れずに行きたいです。

元々、応援が力になるという言葉は、スポーツをする上で綺麗事だという気持ちもありました。結局は自分の意思が強いやつが勝つんだと。でも昨日は本当に皆さんの声援が後押しになる、力になるということを実感したし、みんなの力というものを感じました。そうでなければあれだけ勇気を持って前に行けなかったと思っています。だからこそ皆さんに応援してもらえる価値のある選手にならなければいけないと感じました。

今後は昨日の戦い方がベースになることは間違いないですが、更にパンチ力をアップとかコンビネーションのスピードを上げる、スタミナを更に付けていくということが課題になっていくと思っています。今更、サウスポーになったりアウトボクサーになる訳は無いですからね。」

-試合展開を振り返って
「あのペースで12ラウンドを戦うつもりで相手を押し切るつもりでした。例えば走っている時に疲れたぁってなるとそういうペースになってしまうと思うんです、あの戦い方を続ける、崩さないつもりで12ラウンド行くつもりで戦っていました。8ラウンドや9ラウンドでKOするつもりで1ラウンドから行った訳では無いですし、昨日も試合の途中からタフな試合になると分かっていたので、(予想通りキツい試合になりましたが)7ラウンドで棄権してくれて良かったんですかね(笑)。」

-試合途中で笑顔も見せていましたが、あの笑顔はどういう気持ちから出たものですか?
「色々な意味があったので簡単には言いきれないですけど、相手にプレッシャーを掛ける意味合いもあったし、純粋に試合を楽しんでいた部分から出たものでもありました、テンションが上がった状態ですね(笑)。」

-試合のポイントはどこに有ったと思いますか?
「1ラウンドですね、強いて言えば1、2。3ラウンドの序盤だと思います。序盤からプレッシャーを掛けて行って、結局は物事、結果論ですから作戦が上手く行ったということです。ボディも攻めながら息づかいもどんどん荒くなって行きました。」

-防衛記録に興味はありますか?
「あまり考えていないです、でも今は興味が無いと行っても今後、防衛数が伸びていけば自然と気になるものだとも思っています。例えば今、気にしていなくても具志堅さんの記録数が近付いてくると気になり始めるものだとも思っています。年齢的にもそうですし、具体的にやらなくてはいけない目の前の試合を一つ一つクリアしていくことが重要だと思っていますので今の時点で(防衛記録について)どうこう言うことは無いですね。」

-今後、希望の対戦相手を伝えたりすることはありますか?
「言えないですね、帝拳プロモーションが組んでもらった試合が最善の試合だと思っているし、そういった気持ちで帝拳プロモーションに入りました。僕の仕事はファイターですし、決められた試合に勝つことだけを考えてやるだけです。先に名前を出したゴロフキンやカネロとの試合にたどり着きたい気持ちはありますが、誰とって言うことはありません。」

-試合を終えて家族に逢いましたか?
「まだ逢っていないんです、電話は済ませたんですが息子は生意気な事をいっていましたね(笑)。” なんで試合が終わったのかわからなかったよ。” とか ” パパが泣いたの初めて見た。” とか(笑)。” やったね、パパ!” とか言われるかなとも思っていたのでだいぶ期待外れでしたね(笑)。娘は可愛く、” 明日の保育園のお迎えはパパ?” と聞いてきたので、ウンそうだよと伝えました。(チャンピオンになって)初めての仕事はその迎えになると思います(笑)。」

-チャンピオンと呼ばれることはどう感じていますか?
「こそばゆいですね(笑)。これから色んなものを証明して行って周りから本物のチャンピオン、ピープルズ・チャンピオンになって胸を張れるものと思っているので、まだ村田選手と呼ばれることのほうが心地良いです。」

-昨日の試合を自己採点すると何点ですか?
「70~80点くらいは出して良いと思います。これはネガティブな意味合いではなく、何も無いところから1点ずつ加算していっての点数で、100点から減点したものじゃないのですが、例えばゴロフキンと対した時にどうか、足りない部分は何処か、とかそういう相対的にまだまだという採点のものです。自分の能力的には100点を出して良いと思っていますし、ベストは尽くしたとも思っています。」

-将来の目標はやはり名前を上げたゴロフキン、カネロですか?
「目標というものは常に変わるものだと思っていますし、ゴロフキンとカネロはリマッチをするというニュースも読みました。結果次第でどちらかの選手がどうなるか分からないし、別にゴロフキン、カネロだけにこだわっている訳でもありません。他にも色んな強い相手は居るし、面白い試合というのはあると思っています。ビッグファイトに繋がる試合と言っても目の前の試合の積み重ねだとも思っています。」

-エンダム選手についての印象は変わりましたか?
「仮に僕が負けていたらというか、実際は勝者が敗者に懸ける言葉というのはどのスポーツにも無いと思っています、それは失礼でしかないですから。そうした中で前回は僕が負けたことで声を掛けたのですが、今回はエンダム選手が負けて、その上で向こうから声を掛けてくれたことは嬉しかったですね。歩み寄ってくれたことでまた新しい関係性というか友情が生まれたとは思っています。」

-チャンピオンになったことで得られるもの、防衛戦のリスクなどはどうですか?
「リスクはもちろん有ると思いますが、正直なところ今は考えたくありませんね、少し休みたいです(笑)。ベルトを守ることの恐さや勝てるだろうという雰囲気の中で、しっかりとした気持ちを作ることの大事さも分かっているつもりです。でもチャレンジした上での失敗ならば自分に納得出来ると思うし、そういうところを見ていきたいとは思っています。」

-睡眠は少し取ることが出来ましたか?
「サポートしてくれた方々への挨拶回りや、最後は母校の後援会などに顔を出したことで、部屋に戻ったのは3時半くらいだったと思います。今朝は6時過ぎから番組の収録がありましたのでほんの少しですが休むことは出来ました。皆さん、凄く良かったと喜んでくれましたが今までに無い感動はありました。それは声援の大きさ、応援の力だと思うし、ホームで戦えることの嬉しさだと思っています。」

敗者:アッサン・エンダム選手

「村田は前回より圧力があり手数も多かった。私はまだ続けたかったが、あれ以上無駄にパンチを受ける必要はないとチームが判断した。おめでとうと言いたい。長く防衛してもらい、3度目の対戦ができたらいい」

「最初の2ラウンド後に自分には何も残されていなかった。腕の力も、足のパワーも…」

関係者のコメント

日本ボクシング連盟会長:山根明氏

「村田は長年培ったものが試合に出た。今後もチャンピオンとしてふさわしい試合、行動をしてほしい」

帝拳ジム会長:本田明彦氏
「精神的に強い村田が悩みに悩んでいた。いろんなことをやって途中で狂いも生じた。最後に開き直った。上の選手がいる。そこにチャレンジをするための今日がスタート」

帝拳プロモーション代表(元WBC世界スーパーライト級王者):浜田剛史氏
「村田のプレッシャーは相当なものだったと思う。完璧だった。やろうと思ったことを全てやった」

「初戦の敗者がダイレクトリマッチ(再戦)で勝つことは簡単ではない。お互いに手の内を知り尽くしているし、敗者はやはり心理面の痛手を消し切れず、後遺症を残しているものだ。

村田は初戦で敗れたが、判定問題により、敗者意識はむしろ、エンダムの方が強かったと思う。だからエンダムは前回と違い、接近戦を挑んできた。しかし、序盤の戦い方は、打ち合おうか、足を使って動こうか、と迷いが見られた。村田は前回の戦い方に、より手数を加えることと方向性に迷いはない。その差が勝負を分け、今回は何をしてもダメだとエンダムを戦意喪失させた。

私は村田を勝たせることを役目としてプロデビュー戦から見てきた。面白いことは、村田という選手が“分析マニア”のボクサーだということだ。相手のいいところ、悪いところ、自分のいいところ、さらには悪いところまでも、徹底的に、あるいは趣味的に分析・研究し、常に考えて臨む。普通、ボクサーは自分の弱点をあまり認めたがらないものなのだが…。村田には、そうして戦う自分をまた、冷静に分析しているもう一人の自分がいる。評論家が戦っているようなものだが、自分の土台を知っているから教えられたことに対する理解度が高い。ダメなら修正する力もある。学習能力の高さとともに、緊張する場面でもそれを楽しんでしまうのは、そうしたところから来ている。

私がWBC世界ジュニアウエルター級(当時=現スーパーライト級)の王座を獲った(1986年7月24日)時代、世界の中量級は激しい動きを見せていた。特にミドル級(リミット72・57キロ)は、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラー(ともに米国)らの強豪がリーグ戦のようにしのぎを削っており、日本人選手があのハイレベルな渦の中に入るのはとても無理、夢物語の感があった。層の厚さを含めたミドル級の充実は、このクラスの体格が、欧米人には平均的だからだろうし、競争意識の激しさが、こうしたスーパースターを生み出していた。村田が今、最難関のクラスの頂点に立ったことは、感慨深いものがある。ときを経て人は変わっても、ミドル級を構築する本質は変わらない。その意味で“歴史的快挙”といっていい。おめでとう。」(スポーツニッポン)

大橋ジム会長:大橋秀行氏
「村田が圧倒していた。1回からボディーが当たっていたし、左ジャブの打ち合いでも負けなかったのが大きかった」

ローマ五輪フライ級銅メダリスト:田辺清氏
「7回を終え、相手はこれ以上やったら倒されると判断したのだろう。それほど差があった。日本の五輪メダリストがついに世界王者になれたことはうれしい。特に強い選手が世界に山ほどいるミドル級だから立派だ。本当の快挙だ」

プロボクシング元WBA世界ミドル級王者:竹原慎二氏
「五輪メダリストで世界王者は本当にすごい快挙。金メダルの村田はマスコミの注目や周囲の期待を背負い、私の時とは段違い。前の試合を負けにされ、今回は絶対に勝たないといけないというプレッシャーも強かったはず。褒めてあげたい」

「僕以来のミドル級の世界王者が誕生し、日本人でも重量級で世界を取れることを村田は証明した。同時に五輪金メダリストというすごい重圧の中で本当に頑張ったと思った。僕はオーストラリアで所用があって、試合は生で見られなかったけど、エンダムが棄権したという結果を見れば、村田がどう勝ったかは想像できた。

前回の王座決定戦は微妙な判定だったけど、僕は村田が勝っていたと、いまでも思ってる。これまでの村田の試合には僕から見てて歯がゆさみたいなのがあってね。考えすぎてるのではないかという印象で、何か理屈っぽいボクシングをしてるなという感じがあった。輪島(功一)さんの言葉に「練習は根性、試合は勇気」とある。まさに試合はそういうもの。僕も現役時代は「負けは死」と腹をくくってリングに上がってた。村田にはそういう気迫のこもった雪辱戦を期待していた。

初防衛戦は世界奪取よりもハードルが上がるし、エンダム戦よりも難しくなると思う。前回よりも手数を多く出して前に出た今回の雪辱戦のように、次も多少のリスクを背負っても打ち合うような気持ちを持ってほしい。僕は左目の網膜剥離でどうにもならなくて24歳で引退したから、村田には僕が果たせなかったミドル級での日本人初、初防衛成功を期待している。ゴロフキンら名王者と派手に殴り合ってミドル級の新たな歴史を作ってほしい。」(スポーツ報知)

プロボクシング元世界3階級王者:長谷川穂積氏
「前の失敗を経験に変えて今日この勝利につながったと思います。夢は自分を最後まで信じ続けた人間が叶えるということを証明したという勝利じゃないかと思います。村田選手も負けれないというプレッシャーがエンダム選手よりもあったと思うので、それを跳ね除けて勝利しましたね。色々上積みがあったと思いますが、一番はこの試合にかける覚悟。覚悟さえ持てれば勇気なんてものは勝手に出てくると思うので、それが今日この試合で証明されたんじゃないかと思います。この試合を乗り越えることによって更に強くなりますし、村田選手も言っていた通りこの階級には強いチャンピオンがいっぱいいるので、そこを目指して欲しいなと思います」

「村田君が涙を見せたのは、王者以上の重圧がかかっていたからだろう。前回も覚悟を感じたが、今回はそれ以上の覚悟を感じた。

前戦からトータル20ラウンド目を前にしての決着となった。一度対戦した相手に勝つには、前回から何をプラスしてきたかが問われる。村田君は大きく攻撃を変えられるタイプではないが、右ストレートからつなぎの攻撃を増やしてきた。

エンダムもまた接近戦やコンビネーションをプラスしてきた。しかし、クリンチはふりほどかれ、接近してもダメ、足を使ってもダメ。20ラウンド目を迎えて、もう勝てないとギブアップした。

相手の心を折った村田君の“根性勝ち”。これはこの試合の意味を考えれば最高の結果だ。判定ではきわどいと言われることもあるし、KOには“交通事故”のようなものもある。でも、はっきりと相手が「やりません」と言ったのだから誰もが納得できる。

2人の若い王者も個性が感じられた。初防衛戦の重圧の中でKO勝ちした比嘉君は、ガードが堅く最も倒しにくい相手を倒しただけに価値がある。劣勢から逆転勝ちした拳四朗君は、最初の公開採点で負けているのを知って腹をくくった気持ちの強さがすばらしかった。

ボクシングは拳闘でありスポーツだ。拳四朗君はキャラクターを含めてボクシングを“スポーツ”として体現している。ハングリーな比嘉君にとっては“拳闘”だ。そのどちらも兼ね備えているのが、村田君かもしれない。」(デイリースポーツ)

プロボクシング世界2階級王者(現WBO世界スーパーフライ級王者):井上尚弥選手
「アマチュア時代から本当に良くしてもらっている先輩なので、自分のことのように嬉しいです。インタビューを聞いて『プレッシャーから解放されたなぁ」という気持ちです。泣いてましたねぇ(笑)勝因はやはりプレッシャーと手数でしっかりダメージを与えたというところだと思います。この時代、チャンピオンになってからがスタートだと思うので、またこれから防衛戦目指して自分も一緒に頑張っていきたいと思います」

「めちゃくちゃいい試合だった。前回と違って1回から攻撃、攻撃で行ったので、それが相手の心を折った。普通は外国人相手に体負けするが、むしろ体で押していた。これで日本のボクシング界も盛り上がる。また一緒に頑張りたい」

プロボクシング前WBC世界バンタム級王者:山中慎介選手
「村田はこのプレッシャーの中でよく力を発揮した。3回あたりから彼の感覚で動けていた。精神的にもダメージを与えられた結果が、あのTKOになった」

プロボクシング元世界3階級王者:八重樫東選手
「内容は文句なしじゃないですか。前回折れなかった相手の心も折って、いい形で勝った。僕が負けてからの同じ期間、村田さんの方が何倍も努力して結果を出した。純粋に感動し、勇気をもらった。自分自身、『何やってるんだろう』と思ったし、もう一度はい上がろうと思わせてくれた」

KJインプレッションズ

完全支配

あらゆる格闘技に於いて、ワンサイドゲームを評することは非常に難しい。勝利を手中に収めた選手の素晴らしさは幾つかの極めて単純な言語で表現できてしまうし、敗北に塗れた選手の課題は「実力差」というの言葉に尽きてしまう。この試合がまさにそうだった。

村田諒太選手がアッサン・エンダム選手を破り、プロ初の戴冠を果たした。

前回5月の試合では、終始プレッシャーをかけ続けて、4ラウンドにはダウンを奪うなど村田諒太選手が試合を支配したかのように思われた。しかし、この試合のWBAのジャッジは有効打よりも手数を優先し、結果的にエンダム選手が2-1の判定勝利をもぎ取った。この判定は海外でも大いに議論を呼び、WBAコミッショナー自らダイレクトリマッチを指示するなど、異例の対応が続いた。

こうした状況下で行われる再戦。国内外から高い関心を集め、両選手には大きなプレッシャーがかかっていただろうことは想像に難くない。そんな試合で、村田諒太選手が示したパフォーマンスは本当に見事だった。

前回の試合では、まさに「無言の圧力」とでも言うべき方法でエンダム選手を追い詰めていったが、今回は実に雄弁にパンチを放ち、これまでの村田選手にはあまり見られなかった積極的な左ジャブから左フックや左右のボディーブロー、オープンハンド気味の打ち下ろしの右、そして右ストレートを次々に繰り出してエンダム選手を攻め続けた。ガードは高く強固。そしてエンダム選手や陣営は「もはや何もさせて貰えない」と悟ったのだ。

前回の試合から村田選手が上積みしたものは、おそらく「自信」なのだろう。トップクラスの選手とも互角に戦うことができた。そんな自信が彼を自由にした。だからこそ思うようにパンチを繰り出すことが出来るようになった。目覚ましい進化と言える。

前回の試合の時点でも、同様のポテンシャルはあったと思うが、まだ自分を信じきれておらず出せなかったのかもしれない。こうしてブレイクスルーを果たした今となっては、敗北も無駄ではなかったし、無駄にしなかった村田選手は本当に素晴らしい。

この試合のように実力を存分に発揮できれば、今後も並み居る強豪と互角に対峙しながら順調に経験を積んで成長していけるだろうし、更なる飛躍への期待も高まる。もちろん簡単なことではない。しかし「村田なら」と思わせてくれるのが今の彼だ。これからが本当に楽しみだ。

ミドル級戦線

ミドル級は欧米人の平均的な体格であり、世界的に最も選手層の厚い階級だ。世界的な権威を誇る米ボクシング誌「ザ・リング」のパウンドフォーパウンド(階級を超えた格付け)1位で世界3団体統一王者ゲンナジー・ゴロフキン選手(カザフスタン)や、最近ゴロフキン選手の無敗記録をドローで止めた元世界2階級制覇王者サウル・カネロ・アルバレス選手(メキシコ)といったスター選手。他にもWBC同級1位のジャーモール・チャーロ(米国)、元WBA世界ミドル級王者のダニエル・ジェイコブス(米国)といったタレントが群雄割拠する階級がこのミドル級である。

しかし、村田諒太選手も世界的なスター選手になり得るポテンシャルを存分に秘めている。軽量級ではデビュー僅か数戦で王座を獲得する最短記録が注目を集めるが、4主要団体のミドル級における村田諒太選手の14戦目での正規王座獲得は世界最速である。そして、1904年のセントルイス五輪でボクシングが採用されてから113年の歴史上、オリンピックミドル級金メダリストがプロの同級で世界王者になったのは、村田諒太選手が初めてにして唯一の例である。村田選手は既に2つの称号を得ているのだ。

但し、WBAには正規王者の上位に「スーパー王者」というポジションがあり、現在そのスーパー王者に君臨するのは前述のゴロフキン選手である。多くのボクシング関係者やファンにとってWBA世界ミドル級王者と言えばゴロフキン選手を指す。村田選手に対する世界の目は、まだまだ厳しいものがあるだろう。

これから村田選手は危険な猛者を相手に経験を積み、評価や知名度を高めて、ゴロフキン選手やアルバレス選手といったスター選手とのスーパーファイトを模索していく段階へと突入する。その道は極めて長く険しいものだが、村田選手もまたミドル級戦線を勝ち抜くだけのポテンシャルは充分に持っていると思う。自らのボクシングに磨きをかけて、いつの日かラスベガスのリングでメインイベントを戦う姿が見られることを期待せずにはいられない。

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