Table of Contents
FIA Formula E Championship
コンセプト
フォーミュラEは、2014年に国際自動車連盟(FIA)主催で始まった完全電気駆動のレースで、化石燃料を使わず環境にも優しいため、香港やベルリン、ニューヨークなど世界各国の都市部にて公道レースが展開されている。電力をいかに無駄なく活用できるかが勝敗を分ける鍵となり、フォーミュラEでの技術革新が一般電気自動車への先駆けとなると期待されている。また、まだ創立してまもないモータースポーツにも関わらず、既に世界中の自動車関連企業が参加しており、さらに日本をはじめとする主要な自動車メーカーが続々と参戦を表明している。
マシン
車体はF1などと同じフォーミュラカーだが、内燃機関エンジンや化石燃料ではなく、電動モーターとバッテリーを搭載。全ての走行が電力だけで行われる。フォーミュラEマシンのモーターが発生する動力は前進5速の変速機を介して後輪に伝えられる。車体はスパーク・レーシング・テクノロジーズ製。動力性能的にはF3マシンと同等レベルだが、市街地特性と電動特有の加速によって体感速度は400km/h近いという。
モーターの最高出力は約270馬力で、ドライバーを含めた最低重量が800kgと規定されているマシンを2.9秒で時速100kmにまで加速させることが可能。モーターやバッテリーは単純なものではなく、走行しながら電力を作り出すエネルギー回生・貯蔵システムを備えている。但し、約50分間の決勝レースを走り切る能力は無く、レース中に各ドライバーはもう1台のマシンに乗り換えることがレギュレーションによって義務付けられている。
また、モーター、インバーター、ギアボックス、冷却システム等のパワートレインについてはチーム独自に製造・改良することが認められている。バッテリーはウイリアムズ・アドバンスド・テクノロジー製を採用。
2018/2019シーズンからは乗り換えが無くなり、ドライバーは1台のマシンで完走することが求められるようになる。将来的には停車中にワイヤレス充電するシステムや、コース上の給電レーンを走行してワイヤレス充電する「ダイナミック・チャージング」の導入を目指している。
フォーミュラEでは使用できるタイヤが1種類に限定されており、ミシュラン製18インチの溝入り全天候型タイヤを使用している。
レギュレーション
- 選手権はドライバー部門とチーム部門がある。ドライバー部門は年間成績のうち最も成績が悪かった1戦を切り捨てる有効ポイント制。チーム部門は全成績が対象となる。
- ポイントは1位から10位まで順に25-18-15-12-10-8-6-4-2-1ポイント。ポールポジション3ポイント、ファステストラップ1ポイント。
- レースは基本的に土曜日のワンデイイベント。
- 練習走行は1回のみ、60分。
- 予選は55分。ただし走行時間は40分。5台ごとにグループとなり計4グループに分かれて行う。各グループで10分間タイム計測を行う。練習走行のタイム順に1台ずつ出走し、最大4周まで(アタックラップは2周)。2015 – 2016シーズンからは各グループの走行時間が6分間に短縮される一方で、予選上位5位までの車によるスーパーポール方式のタイムアタックが行われる。
- 決勝レースは最大で60分。フォーメーションラップを行わず、原則としてスターティンググリッドから2列下がったダミーグリッドについた後、スターティンググリッドに移動してからスタンディングスタートでレースが開始される。
- レース中にマシン乗換えのための最低1回のピットストップが義務付けられる。
- 乗り換え前と後の2台のカーナンバーを異なる色にする。
- 時間制限が設定されており、ガレージ内での乗り換え作業は50秒以上かけなければならず、ピットインからピットアウトまでのトータルタイムも指定秒数(レース毎に指定)以上をかけなければならない。(2016 – 2017シーズン現在はトータルタイム制限のみ)
- タイヤがパンクした場合を除き、マシン乗り換え時にタイヤ交換作業は行えない。
- 練習走行と予選ではパワーユニットの最大出力 (200kw/270bhp) を使用可。決勝レース中はセーブモード(180kw)に制限される。
- SNS上の人気投票で選ばれたドライバー3名に、レース中エキストラパワーの使用を認める「Fan Boost(ファン・ブースト)」制度を採用。
- 乗換え後のレース後半に1回のみ、180kWから200kWの範囲内で100kJのエネルギーが使える(秒数制限はなし)。
- ファン投票の締切り期限は、初年度はレース開始まで、2015 – 16年はレーススタート6分後まで。
- 参戦するには最低でも国際B級ライセンスを持った上でFIAからeLicenceを取得する必要がある。
- 1シーズンにつき、各ドライバーは車毎にモーター・バッテリーパック・ギアボックスの使用は1つまで。
- 1イベントにつき、最大で5つの前輪用タイヤと5つの後輪用タイヤが使用できる。
- 1チームに於いて車のオペレーションスタッフは12名まで。
- セーフティカー手順はFIA標準に従う。
- 公式以外のテストは認めない。
- 2016年より、ドライバー部門のシリーズチャンピオンはスーパーライセンスの発給資格を得る。
ファン・ブースト
ファン・ブーストとは、ファンがSNS上でお気に入りのドライバーに投票し、より多くの票を獲得した上位3名のマシンが、レース中に数秒間だけエキストラパワーを得られるという制度である。ドライバーの人気投票という形でファンもレースに参加することができる、フォーミュラEならではの演出である。
与えられるエキストラパワーは、最大100kJ(最小出力190kW、最大出力200kW)。乗り換え後の2台目のマシンで、チームの管理する時間内で1度だけ使用することができる。シーズン4より決勝中のモーターの出力が最大180kWとなったため、ファンブーストによって10~20kWほどパワーアップすることができる。
投票はTwitterかFacebookアカウントで1日1回(UTC0時/日本時間午前9時の段階でリセット)行うことができる。開幕戦の投票期限は香港ePrixレース1の開始予定時刻から10分後の日本時間午後4時10分まで。フォーミュラEの公式サイトとSNSアカウントを関連付ける必要があるが、簡単に投票を行うことができる。
ファンブースト投票はこちらから。
シーズン4(2017/2018)
17/18シーズンにはアウディやルノー、ジャガーなど自動車メーカーを含めた全10チーム、20名のドライバーが出場。
中でも注目はフォーミュラE初挑戦となるアンドレ・ロッテラー選手。FIA世界耐久選手権、スーパーフォーミュラ、SUPER GTで活躍してきた彼の走りが新たな世界で通用するのか目が離せない。
その他にもTOYOTA GAZOO RACINGからFIA世界耐久選手権に参戦中のセバスチャン・ブエミ選手、父親が元F1チャンピオンで自身も数多くのレースで活躍しているネルソン・ピケJr.選手やニコラ・プロスト選手など日本のモータースポーツファンお馴染みのドライバー達が数多く参戦している。
また小林可夢偉が開幕・2戦目の香港ラウンドに出場。史上3人目の日本人フォーミュラEドライバーの誕生となり、その走りも注目が集まる。
チーム&ドライバー
Audi Sport ABT Schaeffler
ドイツの自動車メーカー、アウディのワークスチーム。
#1 ルーカス・ディ・グラッシ(ブラジル)
#66 ダニエル・アプト(ドイツ)
MS & AD Andretti Formula E
シーズン5(2018/2019)よりドイツの自動車メーカー、BMWのワークスチームに移行。
#28 アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルトガル)
#27 小林可夢偉(日本)
DS Virgin Racing
フランスの自動車メーカー、DSオートモビル(シトロエン)のワークスチーム。
#2 サム・バード(イギリス)
#36 アレックス・リン(イギリス)
Dragon
#7 ジェローム・ダンブロジオ(ベルギー)
#6 ニール・ヤニ(スイス)
Panasonic Jaguar Racing
イギリスの自動車メーカー、ジャガーのワークスチーム。
#3 ネルソン・ピケJr.(ブラジル)
#20 ミッチ・エバンズ(ニュージーランド)
Mahindra Racing
インドの自動車メーカー、マヒンドラ&マヒンドラのワークスチーム。
#23 ニック・ハイドフェルド(ドイツ)
#19 フェリックス・ローゼンクヴィスト(スウェーデン)
NIO Formula E Team
新興EVメーカー、ネクストEVのワークスチーム。
#16 オリバー・ターベイ(イギリス)
#68 ルカ・フィリッピ(イタリア)
Renault e.dams
フランスの自動車メーカー、ルノーのワークスチーム。シーズン5(2018/2019)より日産のワークスチームへ移行。
#8 ニコラ・プロスト(フランス)
#9 セバスチャン・ブエミ(スイス)
TECHEETAH
中国のスポーツ・マネージメント会社大手 SECAのチーム。前身はチームアグリ。
#25 ジャン-エリック・ベルニュ(フランス)
#18 アンドレ・ロッテラー(ベルギー)
Venturi Formula E
フランスの自動車メーカー、ヴェンチュリーのチーム。シーズン5(2018/2019)よりメルセデス・ベンツのワークスチームへ移行。
#5 マーロ・エンゲル(ドイツ)
#4 エドアルド・モルタラ(スイス)
カレンダー
日時 | ラウンド | グランプリ | 開催国 |
2017年12月2〜3日 | Round1・2 | 香港 | 香港 |
2018年1月13日 | Round3 | マラケシュ | モロッコ |
2018年2月03日 | Round4 | サンティアゴ | チリ |
2018年3月4日 | Round5 | メキシコシティ | メキシコ |
2018年3月17日 | Round6 | サンパウロ | ブラジル |
2018年4月14日 | Round7 | ローマ | イタリア |
2018年4月28日 | Round8 | パリ | フランス |
2017年7月7〜8日 | Round11・12 | ニューヨーク | アメリカ |
2017年7月28日 | Round13 | モントリオール | カナダ |
2017年7月30日 | Round14 | モントリオール | カナダ |
小林可夢偉選手、香港ePrixに出場
小林可夢偉選手が12月2日(土)、3日(日)に開催されるフォーミュラE選手権の開幕2連戦に、MS&ADアンドレッティ(アメリカ)からの出場が決定!。日本人ドライバーが同選手権に出場するのは、2014年の佐藤琢磨選手、15年の山本左近に続いて史上3人目。
小林可夢偉が12月2日と3日に香港で開催される2017/2018 FIAフォーミュラE選手権の開幕戦と第2戦に、MS&ADアンドレッティ・フォーミュラEから参戦します。みなまさ応援よろしくお願いします。
小林可夢偉
「まずはじめに今回フォーミュラE香港大会に参戦する機会を作ってくれた、チームオーナーのマイケルとアンドレッティ・フォーミュラEチーム、そしてMS&ADをはじめ、スポンサーとパートナーのみなさまに感謝します。アンドレッティは世界的に著名なレーシングファミリーでもあり、その一員としてフォーミュラEのデビューレースを戦えることを大変光栄に思います。 正直なところ事前にきちんとしたテスト走行をせずにレースに挑むのは簡単なことではありませんが、チームも最大限のサポートをしてくれているので不安はありません。香港ではいいレースをしたいと思います。みなさま応援よろしくお願いいたします」
エイドリアン・ブリテン MS Amlinブランド・ディレクター
「小林可夢偉選手がMS&ADアンドレッティのチームに参戦することになり大変うれしく思っています。今後の小林選手の活躍を期待しています。日本人ドライバーがフォーミュラEに再び参戦することがきっかけとなり、今後、日本でフォーミュラEが開催されることを期待しています。我々が保険を提供する世界の人々の将来の安全と繁栄のために、輸送向けに代替エネルギー使用を考慮していくことは重要であると考えています。フォーミュラEは、代替燃料を使用した輸送手段がいかに素晴らしく革新的であるかを示しています。」
マイケル・アンドレッティ アンドレッティ・フォーミュラE CEO
「我々は、香港のシーズン開幕戦において小林選手のような優れたドライバーがMS&ADアンドレッティ(No.27)車を操縦することを、光栄に思っています。フォーミュラ1と世界耐久選手権(WEC)で自身の持ち味を発揮してきた小林選手にとって、フォーミュラEは次の挑戦として最善のものとなるでしょう。日本最大企業の1社であるMS&ADと、人気のある日本人レーシングドライバーが手を結ぶことは、大変素晴らしいことだと考えます。小林選手が香港でデビュー戦を迎える時に、日本のファンの期待は大きなものになると思います。」
開幕戦・第2戦 放送スケジュール
12月2日(土)
11:45〜12:30 FIAフォーミュラE選手権 開幕戦香港ePrix予選(J SPORTS4)※無料放送
15:30〜17:30 FIAフォーミュラE選手権 開幕戦香港ePrix決勝(J SPORTS4)※無料放送
12月3日(日)
11:45〜12:30 FIAフォーミュラE選手権 第2戦香港ePrix予選(J SPORTS4)※無料放送
15:30〜17:30 FIAフォーミュラE選手権 第2戦香港ePrix決勝(J SPORTS4)※無料放送
12月6日(水)
0:00〜1:00 FIAフォーミュラE選手権 香港ePrix開幕2連戦ハイライト(BS日テレ)※無料放送
KJファーストインプレッション
まだまだ黎明期のフォーミュラEではあるが、急速に進化し、注目を集めている。
シーズン2からパワートレインの開発が自由化されたことに加え、2040年代までに内燃機関自動車の販売を禁止する法案がヨーロッパ各国で可決されるなど、自動車産業の環境問題への取り組みに注目が高まるなる中で、フォーミュラEはローコストにEV開発をアピールできる場として期待が高まっている。
自動車メーカーが関与する「ワークスチーム」への移行が進み、レギュレーションが変更されてマシンが新世代となるシーズン5(2018/2019)以降、BMWにメルセデス・ベンツ、そしてポルシェの参戦が決定しており、ルノーを引き継ぐ形で日産自動車も参戦を果たす。フェラーリとホンダも参戦に強い興味を示している。
ファンにとっては、わざわざサーキットへ出向くことなく大都市やリゾート地のど真ん中で比較的容易に新世代のモータースポーツを直接観ることができるようになるため、観光資源としての価値も高まりつつある。今後はますます誘致合戦が加熱することだろう。そうした注目の高まりはスポンサーにも影響を与え始めており、F1からフォーミュラEへ支援先を転換する動きは加速しつつある。
日本ではまだまだ認知度が低い為、出遅れてしまっている感は否めないが、日産自動車の参戦や更なるメーカーの追従、或いは日本人ドライバーが参戦すればもっと盛り上がるはずだ。東京や横浜といった国内の都市部では開催誘致が始まるだろう。
そして、日本人F1ドライバー史上最高の才能を持ちながら、経済的支援に恵まれず志半ばで世界最高峰の舞台を去って早3年。小林可夢偉がフォーミュラカーのFIA世界選手権に帰ってくる。彼のファンとしてこれほど嬉しいことはない。フォーミュラEは可夢偉のフルシーズン参戦を実現するべく関係各所へ強力に働きかけているといい、いずれはそれが実現するかもしれない。
シーズン4は、フォーミュラEのプロローグの完結篇である。特徴的なマシンの乗り換えも見納めとなる。そして、シーズン中には新世代のフォーミュラEマシンのテストも開始され、自動車メーカーの動きも益々活発化する筈だ。そうした技術開発戦争前夜、ピュアなドライバーズレースとしてハイレベルなバトルが期待される今シーズンが遂に開幕する。
まずは今日、小林可夢偉の積極果敢な走りに注目したい。そこから日本のフォーミュラEの歴史は何かが動き始めるかもしれない。
コメントを残す