“The Monster”井上尚弥選手と”The Filipino Flash”ノニト・ドネア選手が、伝説の地で再び拳を交えます。
尚弥選手が保持する世界バンタム級WBAスーパー&IBFとドネア選手が保持するWBCという3本のベルトを懸けた王座統一戦。世界バンタム級主要4団体制覇を目指す両選手にとって、WBSSバンタム級初代チャンピオンと同等以上の重要な意味を持つ戦い。この試合の勝者は、史上9人目の4団体統一王者へ大きく近づくこととなります。
前回、WBSS決勝で繰り広げられた死闘は「The Drama in Saitama(ドラマ・イン・サイタマ)」として世界中から称賛を浴びました。あれから2年7ヶ月ぶりの再戦。果たして、どんな結末が待っているのでしょうか!?
この記事では、井上尚弥vsノニト・ドネア2の試合と反応を追います!
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Table of Contents
WBA IBF WBC世界バンタム級王座統一戦
井上尚弥選手 vs ノニト・ドネア選手
Naoya Inoue vs Nonito Donaire
選手データ
井上尚弥(29歳=大橋)
- 生年月日:1993年4月10日
- 出身:神奈川県座間市
- 身長:165cm
- リーチ:171cm
- 血液型:A型
- アマ戦績:75勝6敗
2011年プレジデント杯優勝
2011年世界選手権出場 - プロ戦績:22勝19KO
WBC世界ライトフライ級王座
WBO世界スーパーフライ級王座
WBA世界スーパー&IBF世界バンタム級王者
リングマガジン世界バンタム級王座
世界3階級制覇王者
WBSSバンタム級初代王者 - KO率:86%
- スタイル:オーソドックス
- ニックネーム:モンスター
ノニト・ドネア(39歳=フィリピン)
- 本名:ノニト・ゴンザレス・ドネア・ジュニア
- 生年月日:1982年11月16日
- 出身:フィリピン国ボホール州タリボン出身
- 身長:170cm
- リーチ:174cm
- プロ戦績:42勝29KO6敗
IBF世界フライ級王座
WBA世界スーパーフライ級暫定王座
WBC世界バンタム級王座
WBO世界バンタム級王座
WBO世界スーパーバンタム級王座
IBF世界スーパーバンタム級王座
WBC世界スーパーバンタム級ダイヤモンド王座
リングマガジン世界スーパーバンタム級王座
WBA世界フェザー級スーパー王座
WBO世界スーパーバンタム級王座
WBC世界フェザー級シルバー王座
WBA世界バンタム級スーパー王座
WBC世界バンタム級ダイヤモンド王座
WBC世界バンタム級王座(防衛1)
世界5階級制覇王座 - KO率:69%
- スタイル:オーソドックス
- ニックネーム:フィリピンの閃光
Fight-Day -試合結果
2022.6.7@さいたまスーパーアリーナ
WBA IBF WBC世界バンタム級王座統一戦
WBA・IBF王者:井上尚弥(大橋)○ KO 2R 1分24秒 ●WBC王者:ノニト・ドネア(フィリピン)
さいたまスーパーアリーナ
プロボクシングWBA IBF WBC世界バンタム級王座統一戦がさいたまスーパーアリーナで行われ、WBA IBF統一王者の井上尚弥(大橋)がWBC王者のノニト・ドネア(フィリピン)に2回TKOで勝利を収めました。
尚弥選手は日本人選手初となる主要3団体王座統一に成功し、2019年11月に激闘を繰り広げて判定勝利したドネア選手との戦いに、完全決着をつけました。
試合動画
勝者インタビュー:井上尚弥
ーー見事3団体統一、井上尚弥選手です!
「ありがとうございます!皆さん、やりました!」
ーーこの地鳴りのような声援、拍手、どう感じていますか?
「懐かしい。2年7カ月前にここでドネアとWBSSの決勝を戦って以来のこの熱気。ホントに力をもらいました、皆さん、ありがとうございました!」
ーー圧倒的な強さ。まず最初は第1ラウンド、右のストレートでした。振り返ってみていかがでしょうか?
「まずその前に、ドネアの左フックを開始早々もらって、ちょっと緊張感がついた。そのおかげでしっかりピりついて試合を立て直すことができました。最後の右ストレートはあまり感触はなかったんですけど、インターバル中に映像を見たらかなり効くタイミングで入っていたので、これは自分がやってきた練習は間違いないぞと。そういう思いでまた2ラウンド入りました」
ーーそして勝負を決めたのは得意の左フックのように見えました。2ラウンドを振り返ってみていかがでしょう?
「まだ2ラウンド目だったのでドネアの返しの左フックだったり、パンチがまだ生きているように感じたので、それほど攻め急がずに攻めた。ただ、ここで終わらせなければ自分の価値観などこの先のステージに進めないと思ったので。そこはこの2ラウンドでしっかりと決めようと攻めましたね」
ーー2年7か月前「ドラマインサイタマ」と呼ばれた大激闘でした。今回も同じような試合になるのではないかと、多くの人が思ったと思います。圧勝でした。どんな気持ちですか?
「自分はやる前から必ず言葉にしていたのが『ドラマにするつもりはない。この試合は圧倒的、一方的に勝つんだ』。そういう思いでプレッシャーをかけてこの試合に挑みました。なのでこの結果になってホッとしてますし、この先1つ上のステージに行けるのかなと思います」
ーードネア選手が退場する時に、このさいたまスーパーアリーナが大きな拍手に包まれました。一番のライバルと言っていいんじゃないでしょうか。ドネア選手にも一言お願いします。
「ドネアがいたからこそ、自分はこのバンタム級で輝けたと思いますし、WBSSの決勝から今日までドネアがまたWBCに返り咲いて、このリングに2人で上がったことがこの感動を生んだと思うので、ドネアに感謝したいと思います」
ーーコロナ禍も少し落ち着いてきて、これから井上尚弥選手がさらに暴れ回る姿を皆さん楽しみにしていると思います。今後の展望をお願いします!
「まず自分が目標としている4団体統一、その統一戦が年内に叶うとするならまだバンタム級で戦います。そして4団体統一が困難、叶わないとするならばスーパーバンタム級に上げて新たなステージで挑戦していこうと思います」
ーー最後にファンの皆さんへ一言お願いします!
「こんなにも多くの声援、そしてさいたまスーパーアリーナまで足を運んでいただきありがとうございます。この先もここにいるファンの方、そして今アマゾンプライムを観ていただいてる方とまた最高の景色を見に行きたいと、自分はさらに上のステージに行きたいと思いますので、皆さん、今後も期待して応援して下さい。ありがとうございました!」
試合後コメント:井上尚弥
ーー試合を終えて今の心境は?
「2年7カ月ぶりのドネアとの再戦で今日こうして最高の結果を残せたことに満足しています。最高の日になりました。ありがとうございました」
ーー1ラウンドは警戒していました。3分間の最後に立て直して右ストレートを入れました。
「まずは1ラウンド目は絶対に取らないといけないと思ってたので、左フックをもらった瞬間、それ以上のインパクトを残さないと取れないと思った。残り10秒の合図が鳴った時に少しだけエンジンをかけた。そこでうまく右が当たった」
ーー2ラウンド目はいかないつもりだったのでしょうか?
「父には『2ラウンドはいかないよ』と言っていました。1ラウンド終了間際にダウンを取って、ドネアにどれだけダメージあるか分からなかった。自分の性格上いってしまうので、落ち着かせるためにあえて様子見るようにしたけど、いってましたね(笑)」
ーー結果的に2回に攻めた理由は?
「左で組み立てようとしたけど、ドネアの足がふらついてダメージきてたので、これはもういこうと決めました」
ーー前回の対戦時と何か変わったのでしょうか?
「タラレバですけど、2年7ヶ月前もこういう試合展開をイメージはしていました。それが2ラウンド目の左フックで全てのプランが崩れた。今日の1ラウンド目の左フックもそれを思い返されるような瞬間だったので、気が抜けなくてピリピリしたような時間だった」
ーー試合前から「ドラマにしない」と自分にプレッシャーをかけ続けてきた理由は?
「試合に懸ける意気込みとか向上心とかを上げたりとか、こういう発言をしたからにはそこに到達するまでやらなきゃいけないと自分に言い聞かせるためでもある。でもやっぱりドネアは実力ありますし、不安な面もあります。それに打ち克ってやるからこその今日の結果だなと実感しています。ものすごいプレッシャーはありますね」
ーー初回を取りたいと思った理由は?
「試合を進めていく中で、気持ちに余裕を持って進めたいので」
ーー左フックはどこにもらったのでしょう?
「右目ですね。効いたわけではないけど目が覚めたというか、立て直さないといけないなと」
ーー思い描いた展開どおりでしたか?
「こういう展開も予想していたし、前回のような激闘も予想はしていた。いろいろなプランをイメージしながら臨んでいた」
ーードネアの出方は予想通りでしたか?
「出方に関しては想像していた中の一つではあった。プレスをかけてきて自分に手を出させてのカウンターだったり。思い描いた通りのものでもありました。戸惑うことはなかったけど、最初の左フックをもらったことによってさらに気を引き締めて戦うことができた」
ーードネアに対して前回と違うと感じた部分は?
「体重の戻し方を感じた。リングに上がった瞬間、戻り切っていないなという印象を受けました。同時にスピード重視の作戦で来るのかなと」
ーー井上選手は左フックを狙っていた。左フックで倒すことにこだわりは?
「こだわりはないです。左フックも自分の得意としているパンチなので。正直、開始早々にもらったので当て返してやろうっていう気持ちはあったけど、だからというわけではないです」
ーー前回は傷だらけながらも試合後に「楽しかった」と言っていました。今回はどうですか?
「また違った楽しさもあった。ダウンを奪った瞬間、夢じゃないかって思うぐらいうまくいき過ぎていました」
ーーチャンスになった時に、慎重にいきました。どういう心持ちで最後は仕留めに?
「カウンターに気を付けながら慎重に攻めました。セコンドの声も聞こえていたし、気を付けろと言われているのが聞こえたし、気を付けないといけないし、自分をセーブするために慎重に進めていました。がむしゃらにいくこともなく、乱れることもなく、出すパンチ一つ一つ今でも覚えているぐらい冷静に慎重に攻めていけました」
ーー改めてドネアはどんな存在ですか?
「リング上でも言いましたけど、WBSSの決勝がドネアとの戦いで、また今日3団体統一をかけてドネアと戦えて。相手がドネアだったからこそ、自分もここまで燃えることができましたし、自分が学生時代憧れていたチャンピオンだからこそ、こういう試合と感動を生んだのかなとおもいますね。自分にとっては、この先、4団体もしくはスーパーバンタム級にあげるという過程で、ドネアと戦えたことをすごく自分は誇りに思って、この先に行きたいなと思います」
ーー年内をバンタムの区切りにする理由は?
「バンタム級は適正階級ではありますけど、一つ上を挑戦したいという気持ちもあります。次にバトラー戦が実現しなければ、違う挑戦者を挟むということになってしまう可能性もあるので、そうすると、どうなんですかね。そこは。場合にもよりますけど、そこはいい選択肢を選んでいきたいなと。まだ先は何年もあるので。また、ちょっとゆっくりしてから会長たちと相談しながら、決めていきたいなと思います」
ーー次の目標を具体的にお聞かせください。
「次の目標は、やっぱりこのバンタム級の4団体統一というのは、ここまで来たので。あと1歩、リーチかかったので。進めていきたいなと。まずは、このバンタム級の4団体統一を中心に、目指していきたいなと思います」
試合後コメント:ノニト・ドネア
「彼はとても強く、勝ちに値する選手でした。おめでとうと伝えたい」
一夜明け会見
Coming Soon…
ボクシング関係者・著名人のコメント
井上真吾(父親/大橋ジムトレーナー)
ナオ、お疲れ。たいしたもんだよ。もう、その一言だけ。緊張と心配と不安はあったけど、尚弥を信用していたから。戦い方はイメージできていたけど簡単じゃない。本当にたいしたものです。
試合前は最高の練習ができた。ドネアだから、このパンチを磨こう、ということはなく、いつもどおり、全体的なレベルアップだけ。ある時、尚弥が久しぶりに、確認をふまえてジャブの打ち方を聞いてきた。「こういう感じなんだけど、父さん的にどう思う?」「それもいいけど、父さんはこう思うよ」とか会話のキャッチボールがあった。最近では珍しいこと。ドネアとの初戦で、もしかしたら不安みたいなものも残っていたのかなと思った。内容は圧勝でも、試合をした本人しか分からない、何かがあったのかも。相手はドネアだから。経験が違うから。そこだけは侮れなかった。だから試合前に尚弥の言葉を聞けて、自分の思いを伝えられた。すごく良かったよ。
ただ、口酸っぱく言ったのは、チャンスの時こそ、慎重だよ、丁寧にだよ、と。良いペースをつかめてダメージを与えても、自信過剰で攻めすぎないように。ドネアはそこで待っていて、不利な状況から、誘ってのカウンターが打てる。それが経験ということ。高2の時に挑んだ全日本選手権で、3連覇を狙った林田太郎選手に決勝で負けた。周りから「勝てる」と言われて、自分にも気の緩みがあった。自分が人生で一番反省しているところです。打倒・林田君で1年かけて練習して、翌年、圧勝した。自信があるときこそ慎重、なんだよ。
尚弥のメンタルの強さは父親でも驚く時がある。前回、左フックで右眼窩底などを骨折しても、そこから10ラウンド闘った。試合終わってもケロッとして「楽しい」って。実は、自分もかつてスパーリングで眼窩底骨折をしたことがあるから、痛みのひどさは分かる。後半にケガをしたなら、あと少しだから頑張ろうとなるけど、2回ですよ。普通、心折れますよ。でも、彼は勝ちきったんだから。
今回、拓真と同じ日に試合となって、目的に向けて兄弟が一緒に練習ができたのは大きかった。減量でキツイ時期も「タクも踏ん張っているんだから」など、お互いが心強くなる。いとこの浩樹も現役に戻って、3人で練習。みんな負けず嫌いで、練習では意地張って競い合う。でも、終わったら笑顔でほっこりできる。そういうトリオなんですよ。子供の時から変わらない。見ていて頼もしかった。
尚弥がボクシングを始めた当初、星一徹みたいに、息子を世界チャンピオンにしようと思って教えていたわけじゃない。1日、1日、強くなればいいと。それを淡々とやってきただけ。でも、毎日の積み重ねこそ、難しい。毎日毎日一生懸命やっていたから、なるべくして世界チャンピオンになったんだとも思う。
ここまで来たら、4団体制覇を成し遂げたい。簡単にできることじゃない。でも、これって尚弥にしかできないことなんじゃないかな? 4つのベルトを手にする尚弥の姿を見たいというのは親の立場。トレーナーとしては「一緒につかみ取りたい」という思いです。(スポーツ報知)
村田諒太選手(12年ロンドン五輪金メダリスト/前WBA世界ミドル級スーパー王者)
1回終了間際に井上がダウンを奪ったパンチは率直にすごかった。ドネアのテンプルに右クロスを入れ、もろに脳に直撃しているようなパンチだったと思う。打ちにいっているから(ドネアも)見えなかったのではないか。あの一撃と、2ラウンド目の詰め方の良さも含め、起こるべくして起こったKOと言える。
自分はプロで2度再戦しているが、再戦にはさまざまな状況があり「これ」と1つにまとめることはできない。経験上、ただ1つ言えるのはお互いのパンチ力、打つリズム、タイミングは未知ではなくなっているということ。前回とはディフェンスの意識も変わる。しかし井上は「そんなことは関係ないよ」と言わんばかりのボクシングをみせてくれた。
今回のポイントは、冷静にプラン通りに戦えるかだと思っていた。お互いにタイミングが分かっているので、両者ともパンチを回避する展開も想定していた。判定までもつれる可能性も頭にあった。前回はドネアが左ボディーでダウンするもろさもみせたが、逆に井上が攻めてドネアのカウンターを食らうことも想像した。実力を出す=必要以上のことは出さないという意味もある。冷静に作戦を遂行した選手が勝つもの。だから井上が勝ったのだろうと思う。
世界5階級を制覇したドネアのスタイルはファイターではなく、カウンターパンチャー。スーパーバンタム級から上の階級ではサイズ的な問題で先に自分から攻めなければいけないケースがあり「待ち」の試合ができなかった印象だった。相手が手を出してくれないとカウンターは打てない。ドネアのスタイルが一番表現できる階級はバンタム級だと思っていた。
前回対決はドネアもバンタム級に戻ったばかり。調整が完全ではなかったはず。今回は不安要素がないのは大きいと思っていた。そして井上戦後のドネアは世界王者2人をKOしたことも大きな自信になっていると思ったが、瞬発的なものは井上が全然上だった。2年7カ月後の再戦でも、その有利は変わらなかった。
井上は強いと思う。やはりバンタム級では無類のパンチ力を持っている。29歳という年齢的にも一番、良い時期だと思う。出会った時からアマチュアで飛び抜けて強い印象しか残っていない。この活躍、成長ぶりは自分としても想像通りというか、すごいなと思う。
ドネアとの再戦は井上の実力を思う存分に発揮できた試合だった。次は4団体統一を目指すことになるのだろう。ジョンリール・カシメロがWBO王座を剥奪されて残念だが、これから先を期待したい。WBO王者のバトラーは少し物足りないかもしれないけれど、逆に日本人初の4団体統一のチャンス。これからの井上の動向が自分も気になる。(日刊スポーツ)
長谷川穂積(元世界3階級制覇王者)
日本になじみのあるWBCバンタム級のベルトがかかった一戦で、尚弥選手が伝統をつないだ。1回のクロスカウンターが、その後の展開のすべてを変えた。立ち上がりの動きを見て、ドネア選手は前回より仕上げてきていると思った。足の動きがよく、尚弥選手のジャブもタイミングもわかっていた。
しかし、1回にカウンターをもらってダウンを喫したことで、2回は焦りが出た。ダウンのダメージはどの程度なのか、この時点ではわからない。ダメージを持ち越さずに蓄積を最小限に抑えるためには、前に出ながらダメージを抜いていく策になる。尚弥選手はそこにうまく合わせた。
勝負の鍵となった1回のクロスカウンターは、ドネア選手が相手のジャブをよけてすぐ右という得意のパンチを強引に打ったことで、尚弥選手のワンツーがカウンターで入った。さらにこの試合では相手のいる場所を見て、瞬時に打ち方を変える反応のよさも際立った。今このパンチが当たるという判断力だ。最後の場面ではワンツー、ボディー、フック、ツーと続けたが、相手にあれだけ効いている中でボディーを一つ挟むのは、なかなかできることではない。
試合のたびに進化し続ける尚弥選手は、ボクシングの神様に愛されたボクサーなのだろう。何十年、何百年に一人現れるような逸材の完成形のようだ。そして、神様がいつもそばで応援してくれるのは、彼が努力を怠らないからだと思う。
練習ありきの規則正しい生活、日々のコツコツとした練習は、試合が決まっていればできる。しかし、彼は常にその生活を貫いている。しかも、あれだけのプレッシャーの中で自分の思うパフォーマンスをやり抜くハートの強さには感服する。
ドネア選手は39歳とは思えないフットワークと反応だったが、それでも尚弥選手と紙一重の反応力の差は否めなかった。僕自身、対戦を熱望してかなわなかった5階級制覇王者は、耐えて耐えて最後に倒れた。その姿には、真の誇りと覚悟を感じた。あとは、引き際を間違えないでほしいと願っている。(デイリースポーツ)
山中慎介(元WBC世界バンタム級王者)
決着が本当に早かった。怖いくらいの強さだ。ドネアもうまくプレッシャーをかけていたが、井上選手は初回からパワー全開で初回の中盤過ぎからスピードと威力に違いが出た。ダウンを奪った1回の右はスピードに差があり、これで勝負があったという印象だった。
2回を迎えて力強さ、スピードがしっかり乗ったパンチを打っていく中でも、ドネアのパンチがあると感じて、相手の打ち終わりやカウンターを意識しながらの攻撃をしていた。普通は少しちゅうちょして手が出なかったりするもの。あるいは強引に行きすぎて危ないパンチをもらったりするものだ。だが(攻撃に出るのと警戒する)バランスが完璧で、素晴らしかった。初戦で12回を戦ったからこそ、この試合では初回、2回目での攻撃につながった。
初戦で(眼窩底骨折など)目のアクシデントがなければ「もっとできた」というのはあったはず。一瞬のスピード、パワーは絶対に負けていないと思ったでしょうし。私の場合は王者時代の2015、16年にWBA王者だったアンセルモ・モレノ(パナマ)と2度戦ったが、少し距離が詰まって2戦目は不安からのスタートだった。井上選手は「ドラマは起こらない」と言っていたが、次にやったらより差を付けて勝つんだ、という自信が出ていた。
私が現役時代に巻いたWBCの同じベルトを、井上選手が巻いているのは誇りだ。ボクシングに絶対はないが、4団体統一戦が実現すれば、統一王者になるでしょう。それくらい差はあると思う。それこそ相手の質で言うと、正直、1階級上でもいいくらいと思わせるほどだ。4団体統一というだけでもすごいのに、さらにそう思わせる時点で普通はあり得ない。今後が楽しみでならない。(スポーツ報知)
田口良一(元WBA IBF世界ライトフライ級統一王者)
想像を超える井上の激勝だった。決着がつくのは中盤以降と思っていたが、こんなに早い完勝になるとは。モンスターらしさを存分に発揮した。
1回のダウンは右のショートカウンター、2回のフィニッシュはワンツーからの左フックだったが、技術的に劇的に進化したという部分はあまりなかったように思う。2年半前より上回っていたのはメンタルだろう。2019年のドネア戦は年間最高試合に選ばれたが、眼窩(がんか)底骨折を負ったことなどもあり「もっといいパフォーマンスができたはず」と思っていたに違いない。
今回の対戦前、「ドネアに触らせない」とコメントしていた。ドネアの力を考えれば難しいだろうと思ったが、相手を圧倒できるいい練習ができたのだろう。このコメントも自信の表れで、ほとんどその通りの試合ができた。
バンタム級には、もはや敵はいない。ぜひ4団体を統一し、スーパーバンタム級に1階級上げ、2階級4団体統一の快挙を成し遂げてほしい。(サンケイスポーツ)
川島郭志(元WBC世界スーパーフライ級王者)
評論のしようがないほどのKO劇だった。
井上は速すぎて、強すぎた。象徴が初回に奪ったダウン。ドネアが右にフェイントをかけて、得意の右パンチを打とうとした瞬間、一瞬速く右ストレートをカウンターで打ち込んだ。2人のスピードの差が鮮明に表れたシーンだった。
もともと井上はカウンターを絶妙なタイミングで打てる。練習したパンチが自然に出たのだろう。2回の猛攻も速かった。ドネアに初回のダメージが残っていたので、スピードの差がさらに鮮明になった。チャンスを逃さない井上の勝負勘も際立った。
私も世界王座を奪ったブエノ(メキシコ)と、立場を変えて再戦したが、防衛を意識して積極性を欠き、苦戦した。井上は3階級制覇してなお、常に「この選手に勝って上を目指す」とチャレンジャーでいる。決して守りに入ることがないから強いし、成長し続けているのだと思う。
彼は4階級制覇とさらに上の目標を掲げている。体格的にバンタム級が適正だと思うが、それをあえて挑戦するのが井上。今の力とチャレンジ精神があれば、4階級制覇も達成できるだろう。1階級上げて、彼のボクシングがどう進化するか。それを見るのも楽しみだ。(日刊スポーツ)
世界バンタム級現役王者
WBAスーパー:井上尚弥(大橋=V7)
WBC:井上尚弥(大橋)
IBF:井上尚弥(大橋=V5)
WBO:ポール・バトラー(英)
KJインプレッションズ
想像を遥かに上回る素晴らしい試合でした!
試合決定以来、井上尚弥選手が発する決意を込めた言葉の数々から、早いラウンドのKO決着となるであろうことは、期待や想像をしていました。しかし、相手はあのドネア選手です。実際にこれほど圧倒的に試合を支配することは、期待や想像はできても現実のものになるとは、心の準備が追いついていませんでした。
[2R TKO 左フック]という個人的な予想は的中しましたが、ただの勘と期待です(笑)正直なところ、当日午後から試合直前まで、ワクワクと共に恐怖心のような感情を抱えて過ごしました。それが「尚弥選手がドネア選手に敗れてしまうのではないか?」という恐怖心なのか、「尚弥選手が想像を絶する強さでドネア選手を圧倒する様を受け入れる」ことへの恐怖心なのか、わかりませんでした。
264秒間の答え合わせ。恐怖心の正体は後者でした。興奮の身震いと共に決壊した涙腺は”感動”という言葉だけでは説明できない”解放感”の入り混じる複雑な感情でした。
コンビネーションやフィニッシュブローも素晴らしいですが、特筆すべきは空間把握能力の高さと恐るべきスピードです。リングを支配する距離感やフットワーク、何手も先を行くことを可能にするパンチスピードもさることながら、パンチを出した後のガードポジションへ戻るスピードは圧巻でした。階級を超えた脅威的なスピードが、圧巻の攻守に繋がっていました。
前回の試合も、尚弥選手が2Rに左フックを被弾して眼窩底骨折を負わなければ、おそらくこの試合と同じように展開していったでしょう。ですが、あの戦いを経た尚弥選手は、更なる進化を遂げたと言えるでしょう。
本当に素晴らしい試合でした。
尚弥選手、世界バンタム級主要3団体統一おめでとうございます!
個人的には日本人にとって馴染み深い、ファイティング原田氏、辰吉丈一郎選手や長谷川穂積氏や山中慎介氏の巻いたWBC世界バンタム級のグリーンのベルトを獲得してくれたことが、本当に嬉しいです。ありがとうございます!!
そして、ボクシングファンとしてこれからも尚弥選手の頂点への戦いを見続けられることを、本当に嬉しく思います。
ノニト・ドネア選手。西岡利晃戦で初めてドネア選手の試合を見て以来、そのファイトスタイルと謙虚な人柄にずっと魅了されてきました。そしてドネア選手の不屈の闘志がWBSS決勝戦とこの試合を実現させました。尚弥選手を進化させたのは、紛れもなくドネア選手です。
ドネア選手には感謝しかありません。とりあえず今は、深いダメージを負った身体をしっかり癒してほしいです。そして、スーパーフライ級のリングに上がる日が来るなら、また全力で応援します!
それにしても、年内に尚弥選手が世界バンタム級主要4団体統一王者になると思うと、明日からまた頑張れそうです。
改めてボクシングって素晴らしい!
最後に余談ですが、ファンとして雪平莉左さんが大きく注目されて非常に嬉しく思います(笑)
前回のように師弟対決というある種の友好ムードは一切無く、両選手ともに「絶対に倒さなければならない相手」への闘志を漲らせているのがヒシヒシと伝わってきます!
瞬き厳禁!KO決着必至の戦いはゴング目前です!