日本人ホンダF1ドライバー候補2018!

KJ
いよいよ2018 F1シーズンが開幕しました。

華やかな舞台の裏で、希少な最高峰のレースシートを狙う日本人ドライバー達が、それぞれのカテゴリーで熾烈な生存競争を繰り広げようとしています。

これまでにF1のレギュラーレースシートを獲得した日本人ドライバーは9人。
中嶋悟、鈴木亜久里、片山右京、井上隆智穂、中野信治、高木虎之介、佐藤琢磨、中嶋一貴、小林可夢偉。
2014シーズン以降、日本人ドライバー不在が続いています。

スーパーライセンス取得条件を満たし、2019シーズンに晴れて10人目のF1レギュラードライバーとなるのは誰か!?
日本人ドライバーの現状と条件をまとめてみました!

スーパーライセンス(Super Licence)

スーパーライセンスを取得するためにはドライバーは以下の条件を満たし、FIAへ申請する必要があります。

  • FIA国際Aライセンスを所持していること
  • 有効な運転免許証を所持していること
  • F1に参戦する時点で18歳以上であること
  • 以下のレースシリーズを2シーズン(80%以上)参戦していること
    ・フォーミュラルノー1.6
    ・F3
    ・フォーミュラルノー2.0
    ・FIA F4
    ・インディライツ
    ・SUPER FORMULA
    ・GP3
    ・フォーミュラルノー3.5
    ・インディカー
    ・FIA WEC (LMP1)
    ・FIA F3 欧州シリーズ
    ・GP2
    ・FIA Formula E
    ・FIA F2
  • 申請前の3年間に以下に示すポイントを40ポイント以上をを獲得していること
1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
FIA F2 40 40 40 30 20 10 8 6 4 3
GP2 40 40 30 20 10 8 6 4 3 2
IndyCar 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
European F3
Formula E
30 25 20 10 8 6 4 3 2 1
WEC (LMP1) 30 24 20 16 12 10 8 6 4 2
GP3 25 20 15 10 7 5 3 2 1 0
Formula V8 3.5
SUPER FORMULA
20 15 10 8 6 4 3 2 1 0
WEC (LMP2) 20 16 12 10 8 6 4 2 0 0
WTCC
DTM
Indy Lights
SUPER GT
15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
Supercars 13 11 9 6 4 3 2 1 0 0
IMSA (Prototype) 12 10 8 6 4 2 0 0 0 0
FIA F4 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
F3
Formula Renault 2.0
Formula Mazda
NASCAR
10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
Asian/ELMS (Prototype)
WEC (GTE)
IMSA (GT LeMans)
10 8 6 4 2 0 0 0 0 0
GT3シリーズ 6 4 2 0 0 0 0 0 0 0
FFSA 5 4 3 2 1 0 0 0 0 0
カート(世界/Sr.クラス) 4 3 2 1 0 0 0 0 0 0
カート(国内/Sr.クラス)
カート(世界/Jr.クラス)
3 2 1 0 0 0 0 0 0 0
カート(国内/Jr.クラス) 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0

スーパーライセンス取得の可能性のある日本人ドライバー

スーパーライセンスポイントを保持する日本人ドライバーの中には、中嶋一貴選手のように既に40ポイントを獲得している者もいます。

しかし、スーパーライセンスの申請にはF1チームとの契約を締結していることが条件となり、トロ・ロッソ・ホンダとの契約には事実上「ホンダ育成選手(HFDP)」や「ホンダ契約ドライバー」もしくは「レッドブル・アスリート」に限られます。(ホンダ以外のPUを使用するチームが、トヨタやニッサン系のドライバーにアプローチする場合は問題ありませんが…厳しいでしょう)

ここでは、2018シーズンにスーパーライセンスポイントを満たす可能性のある5選手の状況と条件を紹介します。

平川亮 Ryo Hirakawa ( Age 24 = Red Bull Athlete )

21Points ( -19Points )

2018参戦カテゴリー
SUPER FORMULA:5th
SUPER GT:2nd

条件
①SUPER FORMULA 1st ( 20Points )
②SUPER FORMULA 2nd ( 15Points ) + SUPER GT 5th ( 5Points )
③SUPER FORMULA 3rd ( 10Points ) + SUPER GT 3rd ( 10Points )
④SUPER FORMULA 4th ( 8Points ) + SUPER GT 2nd ( 12Points )
⑤SUPER FORMULA 5th ( 6Points ) + SUPER GT 1st ( 15Points )

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福住仁嶺 Nirei Fukuzumi ( Age 20 = HFDP / Red Bull Athlete )

18Points (-22Points )

2018参戦カテゴリー
FIA F2:現在17th(Rd.10/12)
SUPER FORMULA:17th

スーパーライセンスポイント条件
①FIA F2 4th ( 30Points )
②FIA F2 5th ( 20Points ) + SUPER FORMULA 8th ( 2Points )
③FIA F2 7th ( 8Points ) + SUPER FORMULA 2nd ( 15Points )
④FIA F2 10th ( 3Points ) + SUPER FORMULA 1st ( 20Points )

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牧野任祐 Tadasuke Makino ( Age 20 = HFDP )

1Point ( -39Points )

2018参戦カテゴリー
FIA F2:現在13th(Rd.10/12)

※牧野任祐選手(ロシアン・タイム)がFIA F2選手権モンツァラウンドレース1で初優勝!レース1での勝利はGP2時代も含めて日本人初!!

スーパーライセンスポイント条件
FIA F2 3rd( 40Points )

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山本尚貴 Naoki Yamamoto ( Age 29 = Honda )

6Points ( -34Points )

2018参戦カテゴリー
SUPER FORMULA:1st
SUPER GT:1st

スーパーライセンスポイント条件
SUPER FORMULA 1st ( 20Points ) + SUPER GT 1st( 15Points )

スーパーGT最終戦前の山本MS部長のコメント

『今週末に(スーパーGTで)チャンピオンを獲って、スーパーライセンスのポイントを満たすことができれば、(スーパーライセンスを)取っておけばいいし、取っておいてもらおうと思いますよ』

『フリー走行1回目だけでも、F1に乗るという経験をさせることで、彼がまた一歩育つということにも繋がるかもしれません。レギュラードライバーになるということだけではなく、彼がF1を経験するということは、とても重要です』

『最近のF1に乗ったのは松下だけですからね。彼はテストで乗りましたが、その評価は高かったんですよ。プログラムをしっかりとこなして、フィードバックも非常に良かった』

『山本選手がダブルタイトルを獲ってスーパーライセンスの条件を満たせば、僕は進んでライセンスを取らせたいと思います。可能性は持っておきたいですから、それを最初から捨てることはありません。そのことについては、当然彼にも話をします』

『(F1に挑戦したいという気持ちは)ゼロじゃないと思います。ただ、スーパーフォーミュラ(フォーミュラ・ニッポン)に参戦し始めた時と同じ気持ちかどうか、そこまで突っ込んだ話しはしていません』

『ただ彼も去年結婚して、子供も生まれて、生活環境も変わりました。ですから、すぐにその回答はできないと思います。当然、年齢的なこともあります』

『まだ具体的には話をしていませんが、今週(スーパーGT最終戦)が終わったら、一度食事でもしようと言っています。そんな機会にでも、話したいと思います』

スーパーGT最終戦後の山本MS部長のコメント

『ホンダの誇り。何とかアクションを起こしたいが、年齢的な問題もある』

山本尚貴選手のコメント

『来年以降のことに関しては、まだレースが終わったばかりですし…まだちょっと具体的なコメントはできません。皆さんが僕に何を求めているのかは分かっているつもりですが、今はスーパーフォーミュラとGT500でタイトルを2つ獲得できたという喜びでいっぱいなので、今はそれだけにさせてください』

『正直…そこに関して、今自分がコメントするのは時期尚早なところはあります。でも自分の中ではある程度考えや意思は固めてあります』

『ただ、ホンダとしての考え方やプロジェクトのこともあるし、またホンダだけではなくて、それを取り巻く環境のことも色々あります。これから何かを話すチャンスはあるのかなと思いますが…まずはタイトルをふたつ獲得できたという喜びに浸りたいというのが、今の素直な気持ちです』

『話せる時が来たら、自分の考えや気持ちをちゃんと伝えたい』

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佐藤琢磨 Takuma Sato ( Age 40 = Honda )

3Points ( -37Points )

2018参戦カテゴリー
Indycar Series:12th

スーパーライセンスポイント条件
Indycar Series 1st ( 40Points )

ヨーロッパ修行を期待される若手日本人ドライバー

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大湯都史樹 Toshiki Oyu ( Age 19 = HFDP )

12Points(-28Points)

2018参戦カテゴリー
JAPANESE F3:5th

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阪口晴南 Sena Sakaguchi ( Age 19 = HFDP )

10Points(-30Points)

2018参戦カテゴリー
JAPANESE F3:4th

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笹原右京 Ukyo Sasahara ( Age 22 = HFDP )

10Points(-30Points)

2018参戦カテゴリー
JAPANESE F3:3rd

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角田裕毅 Yuki Tsunoda ( Age 18 = HFDP )

7Points ( -33Points )

2018参戦カテゴリー
FIA-F4:1st

※ハンガリーにてレッドブルジュニアチームと共に3日間のF3テストを実施!ダニエル・ティクトゥム選手と遜色無し!!

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名取鉄平 Teppei Natori ( Age 17 = HFDP )

0Points ( -40Points )

2018参戦カテゴリー
FIA-F4:2th

KJインプレッションズ(2018.3.11)

まず「平川亮選手をどう考えるか?」で意見は大きく割れるだろう。確かに平川選手はスーパーフォーミュラをニッサン系チーム、トヨタエンジンで戦う。スーパーGTはディフェンディングチャンピオンでありレクサス勢のエースだ。しかも、レッドブル・アスリートではあるが、契約先は日本法人であり、そのカテゴリーは「ツーリングカー」である。
そう考えると、平川選手がホンダPUを搭載するトロ・ロッソと契約することは非常に厳しいように見える。

しかし、今のホンダにはその可能性を完全に排除できない事情がある。それは「F1日本GPの観客数減少」に他ならない。かつては15万人を集客していたが、昨年は半分以下の7万人にまで落ち込んでいる。この問題は開催契約の延長交渉に影を落とし、2019シーズン以降の日本GP継続を危うくしている。そうした事態を打破するためにも「ホンダPUの復調」と共に「小林可夢偉選手以来の日本人ドライバーの誕生」は必要不可欠だ。

仮に2019シーズンに向けてホンダ系ドライバーが誰もスーパーライセンスポイント条件をクリアできず、平川選手だけが条件を満たしていた場合、個人的には彼を起用する可能性はあると見る。それが「トロ・ロッソ(レッドブル)からの推薦」等の理由がついていたとしても。平川選手自身は、そのポジションにいることだけに賭けて今季のスーパーフォーミュラに復活した筈だ。もしかしたら、誰よりもハングリーかもしれない。

ただ、順当にいけば筆頭候補は福住仁嶺選手で間違いない。現時点でのスーパーライセンスポイントもHFDPとレッドブル・アスリート双方からサポートされている立場的にも、最も期待されているのは彼だ。しかし、F2というカテゴリーは簡単ではない。アーデンは中堅チームであり、突然目覚ましい早さを発揮するようになるとは思えない。特にF2は有力エンジニアの存在が勝負を分ける。このチームにはそういうメンバーがいない。

現実的にはF2を5位以内、スーパーフォーミュラを8位以内で終えることにフォーカスしていくと思うが、場合によっては共倒れのリスクも決して低くない。キャラクターの異なる2台のマシンを操り、両極にあるイベントで戦う。それを若い福住選手が許容しきれるのか?筆頭候補と呼ばれつつ、実際にはこちらも大きな冒険に打って出ている。

牧野任祐選手には更に過酷なハードルが待ち受けている。F2でトップ3に入るには、ドライバーのスピードやチームのエンジニアリングだけではなく、政治力が絡む。今年のチャンピオン候補や対抗馬は既に固まっているようにも見受けられ、そこに割って入ることは至難の業だ。

チームは昨シーズンのチャンピオンチームだが、参戦決定が遅れたことで今シーズンから新しくなったマシンやタイヤの理解にやや出遅れてしまった感がある。そのハンディは大きいと見る。ただ、中盤以降には復調する可能性があるし、堅実にポイントを稼ぎ「終わってみれば」という形で2019シーズンに繋げて欲しい。

こうしてみると、ホンダ系若手ドライバーが来季F1まで辿り着くために超えるべきハードルは想像以上に高い。残りの2人は更に厳しいだろう。

スーパーフォーミュラ初代王者でもある山本尚貴選手が今シーズンの国内最高峰Wタイトルを獲得してF1に挑むとすれば、日本のレースシーンも大いに盛り上がるだろう。しかし、ホンダの両カテゴリーでの戦闘力を考慮すると極めて厳しいことがわかる。ブレンドン・ハートレー選手とも1歳しか違わないので年齢的にはまだチャンスはあるが、ホンダの判断としては若手が優先されるだろうし、一度彼を起用してしまうと後進に道を譲り難いという悩ましい問題も浮上する。

しかし、ピエール・ガスリー選手に完敗した昨シーズンの悔しさと、F1王者ジェンソン・バトン選手から受けるであろう刺激を糧に、是非とも大きな成長を遂げて挑戦してほしい。久しぶりに日本国内から日本人F1ドライバーを輩出できたならば、日本のモータースポーツを取り巻く環境にも大きなインパクトとなる筈だ。

佐藤琢磨選手がインディカーシリーズで戴冠するという快挙を成し遂げて、一度は逃したトロ・ロッソのシートを獲得すれば、かつてのファンも含めて盛り上がることは間違いない。例えそれが1年限りの繋ぎであったとしても、鈴鹿の集客に大いに貢献する筈だ。マシンの戦闘力は、山本選手の置かれる状況と比較すればかなり恵まれていると言える。

けれども、アメリカで繰り広げられる戦いの激しさは周知の通り。インディ500勝利という歴史的偉業を果たした琢磨選手を以ってしても、今シーズンのシリーズタイトルを獲得するとは考え難いところ。アンドレッティ離脱の判断も、今季の戦闘力に限れば間違っていたかもしれない。琢磨選手がF1に復帰したら、是非ともモナコでの勝利に期待したくなるが…そうした夢は胸に秘めておきたい。

こうした事実を総合的に見て、次の日本人F1ドライバー候補の最前列にいるのは個人的に平川亮選手だと予想する。

ただ、ここまでに挙げたホンダ系若手ドライバー以外にも有望な選手が育ってきている。阪口晴南選手、大湯都史樹選手、笹原右京選手が挑む全日本F3はトヨタ勢の坪井翔選手や宮田莉朋選手も含め、近年稀に見る激戦となるだろう。エンジン的には3人ともトヨタに対して劣勢に立たされているものの、開幕前から高いポテンシャルを披露してくれている。

2年も勝てないシーズンを過ごした阪口選手の大きな飛躍に期待したいし、国内組では最もポイントを保有する大湯選手がブレイクできるか見ものでもある。そして、ステップダウンを甘受してまでホンダのサポートを仰いだ笹原選手が、真の実力を見せつけるかどうかも楽しみだ。彼らの後ろにもメキメキと頭角を現してきている角田裕毅選手がFIA-F4で控えている。彼は速い。

おそらく近い将来、彼らの中からホンダ系日本人F1ドライバーが登場することは間違い無いだろう。今シーズンは下位カテゴリーにも是非注目してみてほしい。

KJインプレッションズ(2018.11.21)

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スーパーライセンスポイントとホンダの意向

山本尚貴選手が、国内最高峰の自動車レースであるスーパーフォーミュラとスーパーGTという2つのカテゴリーを制して、2018シーズンの国内2冠を達成した。これは2004シーズンのリチャード・ライアン選手以来、実に14年ぶりの快挙である。正直なところ、彼が実際にこの偉業を達成できるとは思っていなかった。彼の努力や実力を侮っていたことを謝罪したい。

山本選手はこの戴冠により、各カテゴリーの年間順位に応じて与えられるスーパーライセンスポイントを35ポイント獲得。2016〜17シーズンに獲得した6ポイントと合わせて41ポイントとし、F1参戦に必要な”スーパーライセンス”の発給条件の1つである「申請前3年間に40ポイント以上獲得」を満たすこととなった。

これで、スーパーライセンス取得に大きく近付いた山本選手ではあるが、ここから先は目に見えない大きく複雑な壁と対峙することとなるだろう。それは”ホンダの意向”という壁である。

スーパーライセンスの申請には、現行F1車両で最低2日間300km以上の走行テストを実施し、実施した国の自動車連盟の承認とともに180日以内に申請するという条件がある。山本選手がスーパーライセンスを取得するには、まずF1チームと最低でもテストドライブの契約する必要があるのだ。そして、山本選手が契約できる可能性を持つチームは、現実的にスクーデリア・トロ・ロッソ一択である。

つまり、山本選手をF1に参戦させるかどうかの判断は、ホンダの意向に依るところが圧倒的な割合を占める事となるのである。

もちろん、結婚して子供を授かったばかりの山本選手自身が、家族と過ごす時間を優先してF1参戦を望まない可能性もある。そうであれば、しかたないとおもうし、ファンや支援者を含む外野がとやかく言うことでは無いだろう。

けれども、山本選手が家族の理解を得て、国内における安定したキャリアも犠牲にして、全てのリスクを負ってでも「F1に挑戦したい」という意思を示したならば、ホンダは全力で山本選手を支援するべきだと考える。

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年齢と実績

山本選手は30歳である。同世代のF1にはセバスチャン・ベッテル選手(31=フェラーリ)、ニコ・ヒュルケンベルグ選手(31=ルノー)、バルテリ・ボッタス選手(29=メルセデスAMG)、ダニエル・リカルド選手(29=レッドブル)、セルジオ・ペレス選手(29=フォース・インディア)、ブランドン・ハートレー選手(29=トロ・ロッソ・ホンダ)あたりだ。昨シーズン終盤にデビューしたハートレー選手を除けば、錚々たるメンバーであり、今やベテランの域に達したドライバー達である。

そう考えると、山本選手がデビューするには遅いようにも思える。しかし、ハートレー選手とは1歳しか違わないし、ハートレー選手はポルシェでWECワールドチャンピオンを獲得しているものの、F1転向後はフォーミュラカーのドライビングに苦戦している。

一方、山本選手はF1への登竜門として世界中に認知されつつある日本のトップフォーミュラでタイトルを獲得している。しかも、全く別のスキルを要求されるスーパーGTでもタイトルを獲得しており、それらはドライバーとしての成熟度を示しており、何ら遜色ない実績である。

そして、ハートレー選手の起用を受け入れた時点で、ホンダには年齢やフォーミュラでの実績を理由に山本選手を推薦しない言い訳は残されていない。

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英語とイタリア語

年齢ばかりが取り沙汰されている山本選手だが、非常に重要なスキルを見逃されている。彼は学生時代、元F1ドライバーの鈴木亜久里が主宰するARTA(AUTOBSCS RACING TEAM AGURI)のスカラシップを獲得して、単身で2年間イタリア留学を経験している。

若き日の山本少年は異国の地、異文化に翻弄されながらも、イタリア語を猛勉強し、自らホテル暮らしを止めてメカニックと同居するなどして、道無き未知を切り開いていった。イタリア語の上達と共に英語も上達していったという。

帰国後も英会話学習を続けており、昨シーズンはスーパーフォーミュラでピエール・ガスリー選手、今シーズンはスーパーGTでジェンソン・バトン選手という新旧F1ドライバーのチームメイトとして、英語でコミュニケーションを行っていた事は周知の事実である。

この「英語」と「イタリア語」こそが、スクーデリア・トロ・ロッソに加入する上で大きな武器となる。何故ならば、そのチーム名が表している通り、かつては片山右京氏や中野信治選手も在籍したミナルディにルーツを持つ、イタリア国籍のF1チームだからである。チームは多国籍集団ではあるものの、ファクトリーも含めればイタリア人の割合が非常に多いことは事実。

英語とイタリア語と日本語を操る山本選手は、かつての日本国内王者達よりも遥かに上手くこのイタリアンチームに馴染むことが出来る筈だ。そして、それは間違いなく武器になるだろう。チームにとっても非常に有益な筈だ。

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現実を直視せよ

いい加減、ホンダもレッドブルも「取らぬ狸の皮算用」は辞めるべきである。期待のHFDPドライバーやレッドブル・ジュニアドライバーがスーパーライセンス発給条件を満たしたならば、その時点での最高の選択をすれば良い。

しかし、現時点でスーパーライセンス発給条件を満たしているHFDPドライバーもレッドブル・ジュニアドライバーはいないのである。それどころか、どちらも一度はレールから外したドライバーに頼らざるを得ない状況となっている。

ホンダは帰国させた松下信治選手であり、レッドブルは解雇したダニール・クビアト選手でありアレックス・アルボン選手である。何故、自陣営の中にF1参戦の権利を得たドライバーがいるのに、彼を無視しようとするのか?

ホンダの山本雅史モータースポーツ部長にしてもレッドブルのヘルムート・マルコ博士にしても、言い方は悪いが”雇われ責任者”である。自らの采配や判断によってF1ドライバーが生み出されることで、彼ら自身が正しいかどうかを見極められる。

彼らにとって、イレギュラーなストーリーによって偶発的に生まれたF1ドライバーは受け入れ難いのかもしれない。だからこそホンダは山本選手のF1挑戦を全力で支援しないし、ヘルムート・マルコ博士もダニエル・ティクトゥム選手に固執するのだろう。

当人にそうした意図は無いのかもしれないが、少なくともファンの目線からはそう受け取らざるを得ない。ホンダにとっても日本GPにとっても日本のモータースポーツ界にとっても、大きな利益がそこにはある。それを手にしないとすれば、大義よりも自らの保身を優先させていると見えてしまうのは仕方のないことだろう。

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ホンダスピリット「やらまいか」

しかし、それは何に対する保身なのだろうか?これまでのホンダの若手育成に問題があったことは山本モータースポーツ部長も自ら認めており、大きな改革に着手したばかりだ。

新たにSRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)のプリンシパルに就任した佐藤琢磨選手もヴァイス・プリンシパルに就任した中野信治選手も、声を揃えて「実力、人間力を兼ね備えた世界に通用するドライバー育成」を掲げた。それはまさに山本選手のことではないか。

マクラーレン・ホンダからデビューしたストフェル・バンドーン選手がそうであったように、例え下位カテゴリーで素晴らしい戦績を残してきても、F1で才能が開花するかどうかはわからない。F1参戦は誰にとっても挑戦なのだ。

そして、リスクをとっても挑戦することこそがホンダスピリットである筈だ。故・本田宗一郎氏の言葉を思い出さずにいられない。
「理屈をこね回してないで、まずやってみろ!」
「人生は”見たり””聞いたり'”試したり”の三つの知恵でまとまっているが、一番大切なのは”試したり”であると思う」
「つねに挑戦、やらまいか」
宗一郎氏が生きていれば、山本部長にも山本選手にも「やってみろ!」と言った筈だ。

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オフシーズンテストへ

ヘルムート・マルコ博士は来シーズン、是が非でもダニエル・ティクトゥム選手をトロ・ロッソからF1デビューさせようとしているようだ。

だが、山本モータースポーツ部長には怒ってもらいたい。「トロ・ロッソのレースシートの1つはホンダに優先権がある」「ダニール・クビアト選手も複数年契約なのにどうするつもりだ?」と。

仮にティクトゥム選手がデビューした場合、噂される松下信治選手が来シーズンのFIA F2で大活躍してスーパーライセンス発給条件を満たしても、そこに空きシートの無い状況が生じる。

その時になって、どちらかのドライバーを追い出せるのか?松下選手を1年間待たせるのか?そうすると最短でも日本人F1ドライバーの誕生は2021年となる。それで良いのか?

まさに今なのである。仮に山本選手がF1で通用せずに1〜2年で挑戦を断念せざるを得ない状況になったとしても、それはそれで意義があることだ。そうなったら次の日本人ドライバーにバトンを渡してくれれば良い。

まずはオフシーズンテスト前半にて、山本選手に2日間のチャンスを与えてほしい。そして、ピレリタイヤに素早く適応して速さや開発能力に期待が持てそうであれば、更に後半も2日間のチャンスを再び与えてほしい。とにかくマシンに乗ればきっとトロ・ロッソやヘルムート・マルコ博士の印象を変えられる筈だ。それがレースシートであれ、リザーブ兼テストドライバー契約であれ、次へと繋がる筈だ。

山本選手の努力が報われ、国内ダブルタイトルの偉業を達成した今だからこそ、ホンダには彼の期待に応えて欲しい。いや、応えることはホンダの義務だと考える。

F1ドライバー山本尚貴の誕生に期待したい。

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